白馬に跨がって暗闇を駆ける。
今の私の姿を見たらまるで父の敵でも討つようだと思うだろう。
帽子の羽根飾りは大げさで、剣もいささか豪華すぎる。
普段ならこんないでたちの者など何処にも居ないだろう。
私自身も笑ってしまう。
それでも、私は剣を放たなければならないのだ。この姿で。
目を閉じれば、貴方の姿が浮かぶ。
ずっと消えることなどないのでしょう。
だが、この世に留まることなどない。
この魂を放てるほど、私はこの戦いに命を賭けられるのだ。
しかし、この憂いの季節を過ぎ去ることができないこの身がもどかしい。
先祖の御霊に祈りを捧げる。そうすれば、導かれているのだと伝わってくる。
そうすれば、気高く生きられたと信じられるのだ。
私はこの戦いに血と薔薇、死と百合を捧げよう。
尊く散るために神風も吹き込むのだろう。
私は馬を進めた。

そう思って覚悟を決めていたはずなのに、ふと涙が伝う。
貴方を想っているのだ。
頭では止めようとするものの、止めることなどできない。
想っていた時間こそ長いものの、契ったのはほんの一夜。
しかし、貴方の存在は私の胸に刺青の様に刻まれている。
「私を忘れて下さい」
それだけしか囁くことが出来ない。

もう一度御霊に祈る。
私が散った後に、麗しき日々が広がっているように。
貴方が、その中心で微笑んでいるように。

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「少女殉血」より創作しました。
これ本当は大和ロックだと思いますが、敢えて少し西洋風にしてみました。主人公(語り手)の出で立ちとか。
でも神風とか御霊とか、基本は「大和」です。
二人称はどうしても「君」が合わないと思ったので、「貴方」に変えました。

余談ですが、羽根飾りについては、シラノ・ド・ベルジュラックや三銃士のダルタニアンを想像していただけるとわかりやすいかな・・・?

DILETTANTES EXPO 2013からいらした方で、サイトをご覧になりたい方がいましたらこちらからどうぞ。
(ちなみに二次、歴史創作文章サイトです)



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