あたたかな…
「ぅー」
「大丈夫かァ?」
冬の寒い日。
暖かい部屋。
38.4℃
布団に包まれたハヤトの体温上昇中。
「ヒュー兄ーぃ、頭痛いよー…げほッ」
熱、寒気、咳。
所謂風邪である。
「お前昨日何してたんだよ?」
「んー…わかんない…」
そんな訳で今俺はハヤトの家に見舞いに来てるのだが。
「てかヒュー兄も大丈夫…? 風邪感染っちゃうんじゃないの…?」
「まァ大丈夫じゃね?」
「…でも」
布団からちょこんと顔を出し、少し不安気な声で尋ねられる。
見詰めてくるのは風邪の所為で潤んだ目。
可愛いなァ、とか不謹慎ながら思ったり。
「何? 俺に帰って欲しい?」
「ぅー、そんなんじゃ無くて…えっとぉ…」
「大丈夫だって」
そう言ってハヤトの頭をがしがしと撫でてみる。
「ーっ」
「あ、悪ィ。冷たかったか?」
「んーん…」
冷たい空気に晒されて冷えた手。
「ヒュー兄の手、きもちい」
そのひやりとした俺の右手を、ハヤトは自ら自身の頬に当てる。
いつもより少し熱を帯びた頬から伝わる体温。
あたたかい。
「…もちょっとこのままでい?」
「どぞ」
目を閉じてハヤトは静かな息を吐く。
今だけは時間がゆっくりと感じられた。
「いっぱい寝て早く風邪治せよー」
「…ん」
そう言って空いている左手でまた頭を撫ぜてやる。
ハヤトには悪いけどたまにはこんな日も良いかな、なんて。
あたたかくなった右手の体温を感じながら、
ただそう思った。
end.
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