Girl's Battle
待ちに待った昼休み。
ガヤガヤと騒がしい教室。
その端…僕の目の前でギャーギャーと言い争っている女の子が2人居る訳ですが。
「同じ年の分アタシの方がハヤト君と釣り合うんだから!」
「何よ! ハヤ君にはあたしみたいな年上の方が合ってるよ!」
何で言い争ってるのかって…
原因は僕らしい。
まァいつもの事なんだけど…
「ねェ、ツララもサァ、bis子さんもサァ…本人目の前にそんな喧嘩止そうよ…」
「嫌よ! 決着付けてやるわ!」
「こっちこそ!」
止めに入ったものの、凄い勢いで否定されてしまう。
周りの皆もチラチラ見ては居ても近付いて来ようともしないし…
女の子って怖い…
「ハヤト君は胸のおっきな女の子の方が好きよねェ〜?」
「そんな脂肪の塊より、あたしみたいに年相応で綺麗な方が良いよね〜」
今度は2人が擦り寄ってくる。
何故か胸を寄せてるのが気になるけど。
「…あの、別に僕はそんな…」
特に興味がある訳じゃ無いので嫌々と否定するけど、それも虚しく…
「「どっちが良いの?」」
2人に強く答えを求められる。…やめて。
「いやその、別にそんな大きいとか小さいとか関係無ゎぷッ」
そう言いかけた時、言葉を切る直前に何かに視界と口が閉ざされた。
…何コレ。
何かむにむにしてるんデスガ。
「あ゛ーーーーーー!!!!」
bis子さんが叫ぶ。
「あぁあッ、あんた…ッ!!!! ハヤ君に何やってんの!!??」
「うふふ〜」
そのbis子さんの叫びに答えるツララの声が、何故か頭の上から聞こえたのが分かった。
「何って、乳挟み攻撃」
さらりとツララの一言。
そうか、コレは胸か…
…って?
……胸?
「ちょちょちょちょちょ、つっ…ツララ!!??」
顔に押し当てられてるのが何か把握した瞬間、
自分が今とんでもない状況に置かれてる事が分かった。
「世の男共が羨む乳攻撃よ〜 存分に堪能しなさぁ〜い」
「ちょっ…やめてよォ…!」
僕別にそんなの興味無いから…ッ!
そう言いたいけど、口が埋められて叫べない。
ていうか、くるしひ…
「た、たすけ…」
「ハヤ君嫌がってんじゃん! 離しなさいよ!」
「あッ」
うりうりと押し付けられるツララの体を、窒息間際でbis子さんがひっぺがす。
た、助かった…
「…ふッ。この勝負、あたしの方が勝ちみたいだね」
「くッ…」
勝ち誇った笑みで、離された衝撃で床に手を付いているツララにbis子さんがそう吐き捨てた。
な、何の勝負なのかなァ…
「つ、兵だわねハヤト君…こんな豊満な乳攻撃に屈しないなんて…」
「…だから僕別にそーゆーの興味無いってば…」
手を付いたままのツララが悔しそうにそう呟く。
僕はそれに普通に答えてみた…けども。
「まさかハヤト君…ひんぬー好き?」
「そうじゃなくてェ!」
チラリとこちらを見たかと思うと、何か更にとんでもない事を言われてしまった。
すぐさま否定はしたけど。
「だから何でそんな話になるのー」
「だってアタシみたいなおっきな胸には興味無いんでしょ〜? …だったらちっさい方が好きなのかなと」
「違うよぉ!」
…どうしてこんな事になるんだろう…
「そもそもハヤちゃんが好きなのって…ねェ?」
「「!?」」
「あ、グリ子何でこんな所に」
そう頭を悩ませていると、いきなりどこからともなくひょっこりと別の女の子が顔を突っ込んで来た。
えっと…確かbis子さんの友達の…
「アンタ達が今更どう足掻いたってもうどうしようも無いんだよ…そう、だってハヤちゃんの心は既にあのヒューお兄さんのモノだから…」
「それは…!」
「知ってるけど…!」
グリ子さんは2人を宥める様な口調でそう言った。
ヒュー兄との事が最早周知の事実になってる事についてはツッコまない。
グリ子さんは真剣な眼差しになり熱く語る。
「そう、つまりハヤちゃんが好きなのは逞しい胸板なのよ!!!!」
「「ナ、ナンダッテー!?」」
「ぇぇぇえええッ!?」
その力説された言葉に僕含め3人は驚きが隠せなかった。
な、何かまたおかしな方向に…
グリ子さんは続ける。
「それにハヤちゃんにはミサキさんってお姉さんも居るしね、そりゃあもう胸なんて見慣れに見慣れて飽きてるのよ」
「「そ、そー云えば!」」
「ちょ…」
そして余計話がぶっ飛んだ。
「くっ…これは盲点だったわ…アタシの胸攻撃が効かない訳ね…」
「あたしも流石に逞しい胸板にはなれないよ…」
あまりの超理論に辟易する僕を余所に、ツララとbis子さんは肩を落として溜め息。
えー、と…何か色々おかしい事に気付いてくれないかなァ…
しかしグリ子さんはまたも続ける。
「ハヤちゃんは性別:受だものね…やっぱり頼れる格好良いお兄さんが好きなのよ」
うんうん、と頷きながら話す彼女に僕は最早どこからツッコんだら良いのか分からなかった。
「…分かった。胸と性別の件だけはアタシは身を引くわ…この2つだけは変えられないもの…」
「そこだけはあたしも同意するよ…」
そう悩んでる間にも、2人は最早僕が「逞しい胸板のお兄さん好き」と言う事で勝手に話を進めている。
だから違うんだって…誤解だよ…
「ねェもうホント話を聞いて? 胸とかそんな話じゃ無いから。そもそもさっき言ってたみたいに僕は単純にヒy」
「でもそんなホモなハヤト君でもアタシはずっと好きよ…!」
「違っ…!」
もう埒が開かないらしい。
疲れた…
はァ、と肩を落とす。
「…そもそも何でそんなに胸とかに執着するの…?」
溜め息混じりにそう一言呟いた時、グリ子さんが遠い目で答えた。
「胸は女の戦いの中で欠かせない要素の一つなんだよハヤちゃん」
「訳分かんないよ…」
取り敢えず今この場だけは引き分けとの事で治まるらしい。
僕は不名誉な称号を手に入れてしまったけど。
「…bis子…次は負けないわ…今度はハヤト君に美味しい料理を作ってあげる対決よ!」
「臨む所よ!」
「いやもう2人共温和しくしてて下さい…」
2人の間に挟まれて、最早どうすれば良いのか本気で分からなくなってきた。
助けてヒュー兄…
end.
[戻る]