それは嘘なんかじゃなくて
目が覚めて隣りに大好きな存在が居る事が嬉しくて安心する。
「…早く目が覚めちゃった…」
ボソリと小さな声で呟く。
起こさない様に。きっと疲れてるだろうから。
今こうやって2人で居れると言う事。
ずっと独りだったから。
まだ少しだけ違和感はあるけど嬉しくて、
頼れる存在が居なかった僕を、いつも抱き締めてくれたヒュー兄が、
大好きで、大好きで、
ずっと一緒に居たいって。
――…でも、
でも、どこか、…不安で。
コレがただの同情だったとしたら?
本当は僕の事好きじゃ無かったら?
ただの見せ掛けだけの嘘だったら?
…最悪の事を考えてしまう。
怖い。先が見えなくて、信じられなくて。
今まで僕に近付いて来た人達は、
“優等生”の僕しか見てなくて、
思い出す度、怖くなる。
一緒に居たい。
捨てられたくない。
せめて嘘ならそれでも良いから、
ずっと、一緒に…
「…どうした? ハヤト」
「…!」
…その時、聞き慣れた大好きな声。
「何か苦しそうだったから…怖い夢でも見たのか?」
「…ぁ、…ヒュー兄ィ…」
知らぬ間に流れてた涙につい声が震える。
「…うん、だいじょぶ…」
でも少し強がり。
…本当は大丈夫なんかじゃないけど。
「ホントか? 泣いてるけど」
「ほ、本当に大丈夫…」
ヒュー兄に嫌われてたらどうしようとか考えてた、なんて、
言えないから。
「…ヒュー兄に嫌われる夢見た」
「何て夢見てんだオメー」
…ヒュー兄は、僕の事、
「嫌いって言われて罵倒されて殴られて捨てられたの」
「どんだけ悪者なんだ夢の中の俺」
…本当はどう思ってるのかな…?
「大丈夫だって」
ふわり、と体を包み込む腕。
「何があっても俺はそんな事しないし、俺はずっとハヤトの事好きだから」
優しい声。
あたたかくなる気持ち。
「だから、安心しろ。
…な?」
ふわふわと頭を撫でてくれるヒュー兄。
僕は、信じて…良いのかな?
「…ヒュー兄…」
「ん?」
「本当に?」
「おぅ」
「嘘じゃなくて?」
「マジ」
「見せ掛けの同情でもなくて?」
「何だそら」
…大丈夫、だよね?
嘘なんかじゃ、ないよね?
僕がヒュー兄を好きでも、良いんだよね?
抱き締められたぬくもりを手放したくない。
ずっと一緒に居たい。
信じたい…って。
「……ヒュー兄」
まだ、少しだけ、…ほんの少しだけ、怖いけど。
少なくとも、この気持ちだけは嘘じゃないから。
「………大好き」
「分かってる」
抱き締めるヒュー兄の腕に身を任せて、
ずっとずっと、側に居たいって、思った。
それは嘘なんかじゃ、無いんだ。
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