休みの日


 


今日は日曜日。学校はお休み。
そしてヒュー兄の仕事も休み。
晴れた空。「今日は何しようか」なんて、どちらからともなく話題に出る。

僕はヒュー兄のベッドの上に寝転がったまま、
「…ねぇヒュー兄」
「んー?」

適当に雑誌を読んでたヒュー兄は僕を見る。

「ゲーセン行きたい」
「お?」

ふと思い付いた行き先。
そう言えば最近行ってないなァ、なんて。

「あー、そうだな。じゃあ行くか」
「うんっ」

そんな訳でいざゲーセンへ。



「…わぁ」

回りを見渡したら沢山のUFOキャッチャー。
ぬいぐるみとかお菓子がいっぱい。
わくわく。

「何か欲しいのあるかー?」

と、ヒュー兄の声。
手には既に財布を携えている。

「えぇっと、じゃあねじゃあね…」

きょろきょろ、とまた見渡して、
「あっ、アレが良い!」

目に付いたお菓子を指差す。
チョコレートのお菓子。

「えー、アレかよー。どうせなら俺も食えるモンにしようゼー」
「えへへ、ヤダ。僕アレ食べたい」

べ。と舌を出す。
ヒュー兄が甘い物苦手なのは解ってるけど、
何か、アレ、凄く美味しそうで。

「しゃーねーなー」

苦笑し、渋々ながらヒュー兄はそのUFOキャッチャーに200円を投入。

ボタンを押せば、軽快なBGMとウィーンと小さな機械音を立てながらアームが動いた。
わくわく。

「……取れるか」

ポチ。
ボタンを止めると、アームがお菓子に向かって降りて行く。

「………」
「………」
「………!」
「ぁあ゛!!!!」

アームはそれに引っ掛かった、と思った…けど、
持ち上げた時にスルリと、包みのビニールを掠めて離れてしまった。
無情にも戻って行くアーム。

「………ヒュー兄いぃぃ」
「はいはい、もっかいやってやるから泣くな」

やれやれ、とヒュー兄はまた小銭を取り出す。

「次こそは…」

投入。そしてボタンを押す。
動くアーム。
待ち受けるチョコレート。

「…………」
「…………」

結果は、

――惨敗。


「…よし、ハヤト落ち着け。な? 後でチョコ買ってやるから…」
「あううぅぅ…」

5回続けても結局取れなくて、
ただ減っていくだけのお金が勿体無くて途中断念。

これなら普通に似た様なお菓子を買った方が安い。…けど、
…あのチョコ、どこに売ってるのかな…

凄く、残念。


「あ、ハヤト、あそこにポップンあるから叩いてこい。叩けばスッキリすんだろ?」
「…うん…」

奥の方に音ゲーのコーナーがあって、取り敢えずその提案に乗ってみる。
気を使ってくれたのは解るけど…
うーん、最近やってないし叩けるかな…なんて。
財布から100円とパスを取り出してゲームスタート。

…そしたら…

「――…なァハヤト…」
「う?」
「…お前どこまでクリアしてんだ」
「んー? もうちょっとで42が埋まるかなァ…」
「…………ぅわぁ」

1曲目をフルコンでクリアしたらヒュー兄に驚かれた。
? Lv38とか簡単じゃないの?

続けてクリアした39と40の曲にもヒュー兄ビックリしてた。
あんまりスコアは出なかったんだけど…
うーん…

…まァ良いか。

「ヒュー兄はやらないの?」
「お前の見たらやる気無くしたわ」
「はえ?」

取り敢えずそんなこんなでポプ終わり。
その頃にはさっきのチョコの事も結構スッキリしてた。

うん。スッキリした。うん。
…うん。
………うん……


それから、2人で太鼓叩いたり、ワニ叩いたり、銃撃ったり…
お金が許す限り色々とゲームして、プリクラ撮って、
ゲーセンを満喫。

気が付けば、もう夕方。
明日は学校。今日は自宅に戻らなきゃ。
…まだ帰らないけどね。

「そろそろ、俺ん家戻ろうか」
「うんっ」

時間は、まだまだあるから。


「楽しかったなー」
「うん」
「チョコは取れなかったけどな」
「…うん………でも」
「ん?」
「今日もまたヒュー兄と一緒に居れたから…、それだけで良いよ」
「…ハヤト」


お休みの日。
いつもよりもっと沢山、一緒に居られる日。

「今度は、ちゃんとお菓子取ってね」
「はいはい」


茜色に染まりかけた空の下。

さらさらと吹く風の中を、
僕達はゆっくり、
ただゆっくり、歩いていった。


少しでも長く居られる様に。






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