バビルナカジの憂鬱


 


ハヤトからバビルの座を(無理矢理)渡されてから早一週間が経った。


「ぐぁあ!!!!何故だ!!!!
 何故俺が地球の平和なんぞ守らねばいかんのか!!!!」
「だって正義の使者じゃーん」
「俺はそんなもん興味無ェよ!!!!」

一見平和そうな学校。
クラスメイトで溢れ返る教室。

そんな教室の中で一人苛立って居ると、タローが笑いながら余計な事を言ってきやがった。

だからすかさず対抗してやる。

「大体何なんだ最近の中学生は!
 神から任された仕事を勝手に俺に押し付けてきやがって。
 そんなだから今の世の中は腐ってんだ!」
「はいはいワロスワロス」

しかしタローはさらりと受け流す。
畜生コイツめ。

「てゆーかサー、神から任されたんならナカジも同じじゃーん。
 結局は神がハヤトからナカジに変えたんだし」
「だからそれはハヤトがそう言」
「でも神からの一任だからw」
「………」

…いかん、コイツと話すとペースが乱されてしまう。

ん? 大体何で俺はコイツとなんか話してるんだ。
考えたらコイツはあの時あの場に居ただけの奴じゃないか。

話す義理なんてねェし。

取り敢えず一つ溜め息を吐いてから机に足を載せて腰掛ける。

今は休み時間なんだ。
せめてゆっくりさせろ。

「アレ〜、ナカジ言い返さないのー?」
「五月蠅い、お前の相手は飽きた」
「えー? ナカジのいけずーぅ」
「………」

スルーだ、スルー。

「ねーぇ、ナカジー」

…スルーだ。

「ねぇったらー」

…ヌルー。

「バビルナカジさーん」

………。

「…テラヒドス! 正義の使者なのに俺をシカトするんだ!
 ナカジなんか敵にボッコボコのぐっちゃぐちゃでアッーされちゃえー!」
「ぇえい黙れ!!!!」


…こうやって休み時間は潰れていく。




「志村ー! 後ろー!」
「!」

下校中だった。
急の叫び声に後ろを振り向くと、謎の怪物が今にも俺に襲いかかろうとしていた。

俺はすかさず考える。

@戦う
A逃げる
B戦う振りして逃げつつ戦いながら逃げる

続きはwebで。

取り敢えず俺は咄嗟にバビルの能力として手に入れた眼鏡ビームをお見舞いする。

「qあwせdrftgyふじこlp!」
断末魔を上げて倒れる怪物。
俺は573の経験値を手に入れた。

「うはwww ナカジ大丈夫?」
「大丈夫だ」

息を整えた所で、パタパタとタローが駆け寄って来る。

「もう、折角のナカジとのLOVE×2下校タイムを邪魔しないで欲しいよね!」
「LOVE×2は余計だ気色悪ィ」

バビルになってからか、
下校の度に変な怪物が襲ってくるのは仕様なのだろうか。
ヌゲーうざい。

ハヤトが俺に押し付けてきた理由が何となく解る。

しかしそんなもん俺に押し付けてくんなバーロー。


そんな事を言いながら何事も無かったかの様に下校。

しかし公園の辺りに差し掛かった所でまたもや足止めされる。

「あー! タローさーん!ナカジさーん!」
「おっ、ハヤト〜!」
「…………」

公園にスケボーでもしに行くんだろうハヤトにバッタリ遭遇。
しかも隣に誰か居る。

「ヒューさんもちは!」
「おぅ、久し振り」

その隣の誰かにタローは何故か敬礼のポーズで挨拶。

一瞬にして俺疎外感。

「? タローの隣…誰? 初めて見るけど」

と、そんな所で俺の話題。

「俺の親友〜 ナカジっつーんだ!」
「うん、学校の先輩!」
「へぇ」

タローとハヤトが軽く紹介してくれる。

しかしちょっと待て俺いつの間に親友になった。

「じゃあナカジ宜しく」
「…宜しく」

取り敢えずそのヒューさんとやらが一瞥して来たので俺も一応応えた。
…が。

…何だろう、あの微妙な笑みは。

あまりにもオーラが黒いので俺はそいつと関わらない様にしようと思った。
と言うか関わっちゃいけないとバビルの直感が告げた。
 


次の瞬間だった。

「キャー!」

公園から叫び声。
何事かと向かうとまた変な怪物が暴れている。

畜生何なんだこのタイミング!

「ktkr!!11 ナカジ、今だ!
 眼鏡ビームでやっつけなきゃ!」
「五月蠅ェ分かってる!」

嫌だと思いつつもすっかりバビルに馴染んでる俺を自覚する度にヘコむが気にしちゃいられない。

俺はすかさず走り出し…

「ナカジさぁ〜ん、頑張って〜」

ハヤトの凄い他人事みたいな黄色い声援に苛ついて思わず奴を殴りたくなった。

「ナカジ何やってんの敵はあっち!!!!」
「解っとるわ!!!!」

イマイチ調子が狂う。

その間にも怪物は唸りを上げ暴れている。
取り敢えず動きを止めなければ。

そう思い、繰り出したのは触手マフラ〜
マフラーが触手の様に伸びて敵を拘束するぞ!

「ぉお! ナカジSUGEEEEEEEEE!」

伸びたマフラーが怪物を締め上げ…

「ねぇねぇヒュー兄、あのマフラーキモいよね」
「だな」
「お前ら呑気に見物すんな!!!!」

…ようとした所で集中力が途切れてマフラーが切れてしまった。

テメェこの野郎こんな時に!!!!

「あーんもうナカジさん何やってんのー」
「お前の所為だ!!!!」
「わーん、勝手に人の所為にされたぁー!
 ナカジさんの馬鹿ぁー!」
「よしよし、きっとハヤトが可愛いから妬みだ」
「お前ら惚気るなら余所でやれェェエエ!!!!!!
 しかも"可愛いから"って答えになってねェェエエ!!!!!!」

敵と戦うより突っ込む方に体力使ってちゃどーしようもなんね。



取り敢えず紆余曲折しながらどうにか敵は倒す事が出来た。

「戦闘描写マンドクセェからって省略にも程があるよね」
「何の話だ」
「うぅん、何にも〜」

公園のベンチに凭れ掛かって一つ溜め息。
いつもよりどっと疲れた気がするのは気の所為なのだろうか。

「でもアレだよねー」
「何だ」
「ハヤトも前まではあんな風に戦ってたりしたんだよねー
 やっぱ大変だよねー」

タローが向こうでスケボーを走らせてヒューと戯れて遊んでるハヤトを見ながらそう言った。

「俺知ってんだよね、ハヤトが辛いって言ってたの。
 さっきみたいに学校帰りに襲われたりしてサ、やっぱ俺らより子供な訳だしキツかったと思うんだよ」

珍しく真剣な声。

「でもヒューさんの顔見ると元気出るって言ってたんだよなァ、テラカワユス」
「ふーん」

俺は知ったこっちゃ無いけど。

と言うかちょっと待て。

「…待て、だからってその辛い役目が俺に回って来た理由は何な」
「面白いからw」
「………」

…こうも見事に即答されると怒りすら通り越して呆れてしまった。


「まァ、アレだよナカジ」
「…何だ」
「きっと今にも別の役目すら回ってくるよ」
「絶対嫌だ」


俺は一体どれ程の役目を任されなきゃいけないのか。


…後ろに迫るスクーリオンと神の陰に、
その時の俺はまだ気付かなかった…



終われ



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