短編 | ナノ




その笑顔も面影



もしも。
俺が任務なんてそっちのけでエースを助けに行っていれば、俺はこんなに後悔しなかったのか?



もしも。
この能力がエースとルフィの役にたってたのなら、俺は迷わずこの能力を使いに二人の元にかけつけたはずだ。


なんで俺はエースを助けに行かなかったッ!?



「なぁエース、どうして死んじまったんだよ。俺はまだ、お前とくだらない事今までの事、話してェ。」


拳を地面に叩きつけた。手の痛みだけが妙に現実に感じた。


早く逝ってしまった大切な兄弟への悲しみと、同じ思いを10年前にこいつらにさせてしまった罪悪感、エースを助けに行けなかった、いや、行かなかった自分への怒り。


そして失った後悔。




なぁエース。




俺の涙が乾いた地面を濡らしていく。
涙がとまらねェんだ。




「なんでお前はいっつも無茶するんだエースッ!」

「死にたがりのバカエースッ」

幼い頃エースに毎日のように口うるさく言ってきた言葉。記憶の中のガキの俺と今、泣いている俺の声がハモった。


記憶の中の俺は泣いていない、記憶の中の俺の台詞には返事が返ってくる。意地っ張りでバカで死にたがりなエースの偉そうな言葉。



「エース、」




エースの墓をなぞるように触れる。それから花、テンガロンハット、剣と触れていく。


俺が手を離した時には触れたもの全てが石化している。
これで簡単に―…。

となりの存在感がデカい白ひげの墓を見上げる。

「エースを、息子にしてくれてありがとうっ」


涙は止まることを知らない。
白ひげは偉大だと聞いた事があるけど、今なら納得できる気がするんだ。俺は、エースを変えてやれなかった。愛してたけどそれを伝えてなんていねェ。
やっぱり親の力って強いんだな。


離れ離れになっていても俺はずっとエースとルフィが心配で仕方がなかったよ。
あの弱くて泣き虫なルフィと、死にたがりで無茶ばっかりするエース。



「出来の悪い兄弟を持つと大変だなっ」


涙でぐしゃぐしゃになった顔でエースの墓に笑いかけた。



エース、お前はちゃんとくいの無い人生を生きれたか?







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