俺がサッカーを始めたきっかけは、多分あいつの一言がそうだと思う。まだそんなにサッカーに興味がない時、二人で何と無くでやり始めたボールの蹴り合い。キャッチボールならぬ、キックボールだろうか。それをしていたら、幼いあいつが言ったんだ。「ボール蹴ってる真ちゃんかっこいいね」と、そりゃあもう屈託の無い笑顔で。当時から何と無く気になっていた女の子に言われたその一言は、俺をサッカーに導くには動作もない事だった。

それからは毎日、ボールを追いかけて泥まみれになった。それはもう、今の円堂みたいに。上手くなったらまた褒めてもらえるかもしれない、そんな淡い気持ちを抱いて走った。


「ねぇ、真ちゃんはもうリンとは遊んでくれないの?」
「サッカーするから一緒に遊べない」


寂しそうな顔に気づかずに、俺はあいつを遠ざけた。別に嫌いになったわけでは無い。ただ驚かせたかっただけなのだ。サッカーの試合に出て、活躍する俺を見せたかったのだ。だから内緒で特訓をしたかった。好きな子にはかっこいい所を見せたいものだろう?俺も例外では無かった。

それでいざ試合があるから見に来てくれと言おうとしたが、あいつは「リンがいるときっと真ちゃん迷惑でしょ?」と泣きそうな顔で言うのだ。「そんなわけ無い。今までの特訓はリンが見てくれないと意味が無い」と、そう言えたのなら俺の隣にリンは今でもいてくれてるのだろうか。

これが俺の中途半端な恋だった。






2013.06.24
半田はヘタレだからベストなのだ。

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