ゆっくりと音もなく降り積もり、世界を空白にしてしまう雪を嫌いだと言った君を、僕は意外だと思った。君ならきっと、ロマンチックね、とか言って笑うのだろうと。


「まるで、マリンスノーみたいですね。などと言うとでも?」
「いや、そこまでは言わなくても、ただ雪景色は好きかなって思ったんだけどな」
「えぇ、秋はそういうの好きそうですよ」
「なんで今秋が出てくるのさ」


今は遠く離れてしまった幼馴染み達を思い浮かべた。秋や土門は元気だろうか。空白になった空き地をぼんやり眺める。


「やっぱり冬は嫌いです。寒いので」
「じゃあ冬はオーストラリアにでも行くか?」
「そうですね、魔術師さんが費用を全部負担してくれると言うのなら、それもいいかもしれませんね」


冗談を織り交ぜた風に言い、彼女は綺麗に笑った。そう出来たのならしてあげたいのだが、生憎俺達は中学生なのでそれは出来ない。でもいつかは、二人で旅行とか行きたいとは思っている。


「でも私としては、このアメリカで体を治してからの方がいいと思いますけどね」
「・・・うん、そうだね。あと少しだけ待ってて」
「さあ、それは分かりませんよ。飛鳥が私を攫ってしまうかもしれませんし」


それは笑えないでしょ。土門が彼女のことを好きなんて聞いた事ないけど、彼女は美人なんだから土門だって好きに決まってる。


「でも、今はまだ此処にいようと思います」
「リン・・・・」
「私自身、長距離の移動は耐えられないと思いますし、何だかんだ言っても、私は此処が好きですからね」


暗くなった空から舞い落ちる雪は、まるでマリンスノーのようだった。適当に言ったであろう彼女の喩えは、あながち間違いじゃなかったな。


「ねぇ、もし二人の体が良くなったら、一緒に世界に行こう」


昔から心臓が悪い彼女と、何年か前に事故に遭った俺。似ているようで、まるで似ていない俺達だけど、神様がそんな俺達を巡り会わせたのはきっと意味があると思う。もしたとえ意味なんて無くても、俺はリンと会えて良かった。


「そうですね、いつか日本に行きたいですね」
「日本はいい所だよ。きっとリンも気に入る」
「・・・それは、楽しみですね」


(でもきっと私は一哉とは一緒に行けませんね)
(でも、これでいい。いいのです)



彼女が最後に何を言ったかなんて俺は知らない









2013.03.15

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