「世界を敵に回しても、俺が君を守るよ」


小さな指を絡めて約束したあの頃は、俺もリンも幸せだった。その言葉を信じて俺は今もリンの傍にいる。


「私、ヒロトが居てくれるだけで幸せだよ」


なんて言葉をリンはくれた。昔から変わらない俺が好きな笑顔で言ってくれた。昔と今じゃ、立場も仲間も帰る場所も違うけど、そんなのは気にならない程俺はリンが大切だった。


「今日はいつまで居られるの?」
「長く居たいんだけど、今日は父さんが練習を見に来るから早く帰らなくちゃ」
「そっか。なら仕方ないね」


リンが居なくなったお日さま園では、宇宙人ごっこを強制させられ、俺たちは今では世の中の嫌われものだ。そして何の因果か、引き取られて行ったリンは雷門中のサッカー部でマネージャーをしていた。


「ねぇ、リンは本当に幸せかい?」


最近になって、俺は気づいてしまったんだよ。陳腐な台詞を得意気に言っていたあの頃は、良かったのにね。今ではどうだろう。


「・・・何でそんな事聞くの?」
「俺はね、リンと一緒に居られて本当に幸せだったんだよ。だってずっと前からリンが好きだったんだから」


気づいてしまったんだよ。俺がリンの側にいるから、世界が敵に回るという事に。きっと雷門でリンは、仲間に疑われているのだろう。俺と一緒にいる事で、リンが苦しむのならば、もう一緒にいない方が世界から守れる。


「だから、これで最後だ」
「・・・・・ヒロト」
「ごめん、リン」


宇宙人ごっこなんて、エイリア学園なんて、そんな下らない復讐に俺たちを巻き込まないでほしかった。でも父さんの願いは断れないし、宇宙人ごっこをしなければ、リンを見つける事さえ出来なかった。


「いつか、また一緒にサッカーをしよう」
「その時はちゃんと迎えに来てね」
「うん、約束する」


リンの小さな体をきつく抱きしめた。いつになるか分からない未来まで、リンの体温を覚えておけるように。


「ヒロト、好きよ・・・」


頬を伝う温い水をリンに悟られないように、俺はゆっくりリンを離して背を向けた。

世界が俺を嫌っても、君だけは守るよ。


「サヨナラ」


いつか、また会えるといいね。







2013.02.22

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