絶賛五月病注意報 | ナノ

絶賛五月病注意報




「いい天気だねシズちゃん!!」
「だりぃ…」


上機嫌な折原臨也の隣には、仏頂面な平和島静雄の姿。休日の、しかも連休中なのに、二人の間には激しい温度差があった。


「気晴らしだよ気晴らしっ」
「うるせ…五月病なめんなよ…」


そう言って静雄は歩きながら項垂れる。それから深いため息と、だりぃ、の声を連呼させた。それはまるで、何かを唱えているかのようで。


「何ぶつぶつ言ってんのさ、お経みたいだよシズちゃん」
「だりぃもんはだりぃ…」


先ほどからだりぃしか言わない静雄に対し、臨也はどうしたものかとため息を吐く。それからふと目についた場所に気付き、声を漏らした。


「…あ」
「だりぃ…」
「ゲーセン行こうシズちゃん!!」
「あ?だりぃし金無くなんじゃねぇか…却っ「お金は私が払うから!!」


ね、いいでしょ?と。静雄の腕を掴んで上目遣いで見つめれば、断る理由なんてどこにもない。むしろ断る方があり得ない。臨也はそんな自信を持って静雄を見つめた、のだが。


「…だりぃ」


…しかし今の静雄には何をやっても無効果らしい。再び項垂れて、却下と言いながら手を力無く振った。


「もうっ、シズちゃんの馬鹿!!」


そんな静雄に怒る臨也は当然不機嫌になる。馬鹿、と言いながら頬を膨らませた。


「せっかくのデートなのに、」
「……」
「シズちゃんは私より五月病を取るんだねっ!!」
「…いや五月病取るならお前取るけど…、」


項垂れていた状態から顔を上げる静雄。それからジッと臨也を見つめる。


「頼むから…また今度にしてくれ…」


そう言って静雄は臨也の頭を撫でる。暫し眉間に皺を寄せていた臨也だったが、やがて仕方無いと諦めたかのようにやがてため息を吐いた。


「…じゃあ今度にしてあげるから、せめてアイスくらい買ってきてよ」
「アイス?…まあ、それくらいなら…ちょっと待ってろ」


それから静雄はアイスを求めてその場を離れる。その後ろ姿は絶賛五月病真っ最中の無気力な、静雄らしからぬ後ろ姿であった。


「…五月病、恐るべし」


あの静雄をここまで無気力にさせた五月病に、臨也はうんうんと頷き呆れるどころか逆に感心する。それと同時に、これからこの時期には注意しないとな、と心に誓った。


「お前、平和島静雄の女だな」


そんな時、ふと背後から聞こえてきた声に臨也は振り返る。


「誰?」


そこにいたのはこの辺りでは見かけない男で、臨也は首を傾げた。


「平和島静雄は俺が倒す」
「は?」
「大人しくしてろ」


奇妙な男だな、と思った瞬間。臨也の腕は男に掴まれた。









***









数分後、静雄がアイスを買って帰ってくる最中。ふと臨也がいた方向に人だかりが出来ていて、静雄は何だ、と首を傾げた。


「平和島静雄を出せぇっ!!」


その時聞こえてきた声に気付き、どうやら面倒な事に巻き込まれたらしい。静雄は普段以上に不機嫌な表情を見せた。


「…だりぃ」


臨也を捜すのも先だがとりあえず人様に迷惑はかけたくない。静雄はアイスを持ったまま人だかりをかき分けて行く。


「平和島静雄はどこだあっ!!」
「…止めた方が身のためだよ?」
「うるさいっ!!」


そして静雄の目に映ったものは。知らない男と、その男の腕に首を絞められるような状態で刃物を突きつけられている臨也の姿だった。


ビキッ


途端に静雄の額に血管が浮き上がり、手の中ではアイスが握り潰される。それはぽたぽたと地面に垂れながら、静雄の手の平を汚した。


「あ、シズちゃん」


殺気に気付いたのか、臨也は静雄の名を呼ぶ。それと同時に、男も静雄の方を見た。


「お前が平和島静雄か!!」


男が叫ぶ。しかし静雄は無言のまま。俯いているので表情は見えない。


「こいつお前の女だろ?返して欲しかったら俺と「ぁあ゛!!?」


ドスの効いた静雄の声音に、途端にまわりは静まり返る。それと同時に、男の腕が緩んだ。
その隙に臨也は男の腕からすれりと脱け出して。ポケットから取り出したナイフで男の頬をつぅ、と撫でるように傷つける。


「ご愁傷様」


そう言って妖しく微笑する臨也を見て男が綺麗だな、と思う間もなく。


「手前…人の女に手ぇ出してんじゃねぇよ!!!!」


男から離れていく臨也と入れ違いで迫ってきた静雄によって、男の身体は盛大に吹っ飛んだ。










***









「あーすっきりした」


太陽も沈みかかった夕方。静雄がポキポキと首を鳴らしながら言う。


「五月病治ったの?」
「おう、おかげさまで」


そう言って笑う静雄に、よかったね、と同じように笑う臨也。帰ったら何しようか、と身体を伸ばす。


「あーその事なんだけどよ、」
「どしたの?」
「なんつーか…今からゲーセン行こうぜ」


五月病も治ったしな、と苦笑する静雄。一瞬目を瞬きさせる臨也だが、途端にぱぁっと表情が輝いて。


「シズちゃん大好きっ!!」


思いっきり、静雄に抱きついた。







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leiny様のみお持ち帰り可能です!!

な、長らくお待たせいたしました…!!
本当に申し訳ございませんorz
ラブラブ…ですかね←

リクありがとうございました!!