「修也先輩は、生まれ変わったら何になりたい、とかありますか?」
キャラバンの上で、二人寝転びながら、降り注ぐ流星を眺めていた時、徐に彼女がそう問うた。
「俺は…生まれ変わってもサッカープレイヤーでいたい」
「…なるほど、先輩らしいや」
そう言うと彼女はクスクスと笑う。声につられて横を向くと、彼女の瞳は、キラキラと夜空から溢れる星々で煌めいていて、思わず見惚れてしまった。普段とは違った、その黄昏た表情の美しさから目を逸らして、「そういう神崎は何になりたいんだ」と問い返す。すると、僅かな間があってから、こう返された。
わたしは、ほしになりたい。
と。
「…随分とロマンチストなんだな、知らなかった」
「……そうですね、そうかも知れないです」
「……どうしてそう思うんだ?」
「星は、悠久の時を過ごすでしょう。星は、誰かの祈りを、幸せを背負って、誰かの一生を見守っていられる…それってとっても素敵だと思いませんか?」
「…その誰かっていうのは、誰なんだ」
逸らした目をもう一度彼女に向けると、ぱちり、視線がかち合った。
神崎は、何故か泣きそうな表情をその小さな顔に浮かべ、曖昧に微笑んで見せる。
酷く弱々しくて、酷く魅力的な笑み。
やがて、目尻に浮かび始めた涙を拭うように手を這わす。妹が泣いた様子を思い出して、思わず苦笑を漏らした。
「…私が、星に、なりたいって思うのには、もう一つ理由があって、」
親指で拭っても、拭っても、堰を切ったように 溢れる小さな宝珠。
「どうしたんだ、そんなに泣いて」
「みあげる、でしょ、う、先輩は、流れ星が、天を翔ければ、綺麗だな、って、わら、うでしょう、みて、くれるでしょう、」
「…おい、本当にどうしたんだ」
どこか痛いのか?そう訊けば、痛いです、先輩、痛いです、と泣きじゃくる彼女。
「……修也先輩」
『 星が、綺麗ですね。』
(貴方はこの想いを知らないでしょうね。)流星群が見られると神崎に誘われ、寝転んだキャラバンの上。星明かりに照らされた彼女は、誰の幸せを祈るのだろう。
(20150710)
title :chocolate sea*
後日手直しするかもしれません
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