ちょっとだけ暴力&エロ?あ、そうでもないかもです←
苦手そうだなと思った方は注意!


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『ミクロコスモス』



少し小さめのノックをすると、藍川はすぐ出てきた。
いつもの満面の笑みに少し安心して、手招きされるまま部屋に入る。
するとその瞬間に、むわっと甘ったるい匂いで包まれた。
今まで嗅いだことのないくらい甘くて、くらくらする香り。
その匂いの重さに耐えきれなくて、思わず頭を押さえた。
がんがんと頭が割れるように痛い。

「なあ…この匂い…」

「俺、翔のことが好きなんだ」

「は?」

「翔も俺のこと好きだよな?」

突然の告白に戸惑って、言葉が出てこなかった。
両肩を掴まれて、身動きができなくなる。
爪が肩に食い込んでいくのが分かって、思わず情けない声を出してしまった。
いつもと同じ笑顔なはずのに、怖くて、痛くて、逃げ出したくなった。

「や、やめろよ…」

「やめろ…?」

にこにこ笑っていた目が急に鋭く光る。
それと同時に頬に鈍い衝撃を感じて、気が付いたら目の前は床だった。
涙が出るほどの痛みと、そのぴかぴかに磨かれたフローリングを見て、自分が殴られたのだ気が付く。

「俺も好き、って言ってくれないの?」

「いって…お前、ふざけ…」

反論しようとして上半身を起こしたら、胸ぐらを掴まれた。
頭がくらくらしてうまく力が入らない。
この、匂いのせいだ。

「な、んで…」

「翔の全部、見せてよ」

ひとつひとつシャツのボタンがはずされてゆく。
嫌で、気持ち悪くて、仕方なくて、必死に寄りかかる体重を押し退けようとするけれど、
手に力が入らなくて、藍川の服をするすると滑り落ちてしまう。

「ちょ、と…ほんとにやめろっ…!」

「俺のこと好きなんだろ!」

無防備だった腹に拳がえぐられるようにして入り込む。
今まで感じたことの無いくらいの痛みを感じると共に、
喉の奥がきゅう、と鳴って猛烈な吐き気が襲った。

「前に言ってたよな。甘い香りが苦手だって。」

「ぅ…ぁっ…や、」

「この香り、探すのに苦労したんだ。翔、健気な子がタイプって言ってた。なあ俺、健気だろ?」

「な、に…言って…」

苦しさの中で、わき腹あたりを這う手に、びくびく反応してしまう自分の身体が憎らしい。
無駄だと分かっていながらも、必死にいやいやと首を振った。

「やだ、っいや…!」

「そんなかわいい声でやだなんて言うのかよ、逆効果だぜ?」

耳のすぐ近くで囁かれて、そのまま甘噛みされる。
無意識のうちに上擦った甘い声が出て、羞恥心のあまり顔が、かあっと熱くなったのが分かった。
にやにやといやらしい顔が近付く。

やだ、怖い、誰か…誰か…

「翔ちゃんから離れてください」

「は、」

ふいに頭上から聞き慣れた声が降ってきて、その瞬間、藍川の頭が視界から消えた。
代わりに飛び込んできたのは、いつもの匂いと、ミルクティー色のふわふわの髪の毛。
抱き締められたその大きな手が那月だと分かった瞬間、涙がぶわあと溢れてきて、視界がぼやけた。

「そんな汚い手でおチビちゃんに触んないでくれるかなあ」

「じ、神宮寺…!」

レンに手首を掴まれ、藍川はわかりやすく顔を強張らせる。
対照的に、レンの顔はにこにこ笑ったままだ。
あ、すごい怒ってるな、なんて思ったときにはもう遅くて、降り下ろされた拳は頬の骨を砕く勢いで、藍川の顔にねじ込まれた。

「翔ちゃん、大丈夫ですか!?怪我は…あ、血…血がっ…!」

「血?」

レンの目がぎろりと光る。
藍川の顔から、血の気がサーッと引くのが分かった。
このままじゃ、藍川が半殺しにされる。そう思った俺は、とっさにレンの腰にしがみついた。

「翔?危ないから離れて…」

「…友達、なんだ」

「は?」

冷たい視線が、身体を突き刺すようで、怖くて声が震えた。
レンのこんな顔、はじめてだ。

「お、おれは大丈夫だから…もう殴らないで…」

「大丈夫なわけないだろ、こんなに涙いっぱいうかべて」

「あっ…や、これは…違っ…」

「ここまでされて、まだ友達だなんて普通言わねえんだよ!」

物凄い剣幕で怒鳴られて、びくりと身体が揺れた。がたがたと手が勝手に震え出す。
言葉がでてこなくて、見開いた目から一粒だけ涙が落ちた。

その涙に、レンの顔が苦しそうに歪む。

「翔…ごめん、オレ」

肩に触れる手に、身体が強張った。
手の震えは、まだ止まらない。
ばしんという音がして、気が付いたら、レンの手を払い除けていた。

息が喉を猛スピードで行き来して、涙が溢れる。
どうしていいのか、もはやなにもかもがわからなくなった。

あれ、どこからがおかしかったんだろう。
どこでレールを踏み外したんだろう。
誰が、いけないんだろう?

ちかちかと蛍光灯が光る中で、答えの出ない問いかけをぐるぐる巡らせながら、俺は意識を手放した。



『ミクロコスモス』



翔ちゃん、ごめ…←
レンさまは翔ちゃん守りすぎて周りが見えなくなるくらいがいいです。
そしてまだ続く。

⇒NEXT!!!


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