外はどしゃ降りの雨。

駅前の階段にうずくまっていたずぶ濡れのかわいいうさぎちゃんに
傘を差し出してやれば、すごい目付きで睨まれた。


あれ?俺良いことしたはずなのにな。



『ねえレイニー?』



「風邪引いちゃうよ?」
「いいの。傘、嫌いなんさ。」

雨が嫌いなら分かるけど、傘が嫌いってどんな子だろう。

なんで?と俺が興味津々で聞いたら、なんでも。と答えることを拒否された。

「でも、君が風邪引いたら俺が困るんだよな。」
「初めて会ったのに?」
「うん」

なんで? 少年が綺麗な翡翠色のガラスみたいな瞳で聞いてくるから、
俺はちょっと意地悪して、なんでも。と笑ってみせた。

「答えになってないよ」
「君も答えなかったじゃないか。」
「じゃあ、オレが答えたらあんたも答えてくれる?」
「もちろん」

すると、少年はいたずらっぽく笑って

「取引完了だね」

と冷たい手で俺の傘を引き寄せた。



「傘は、自分一人しか入れないから嫌いなんさ。世界が狭くなった気がしない?」
「しないな。あいにく俺には仲間も守りたい人もいないんでね。」
「冷たい奴さね。まあ、オレもだけど。」
「…そっか」

そう言ってびしょ濡れのオレンジ頭を撫でまわすと、少年はくすぐったそうに頭を振った。
寒さからか、カチカチと震えている。

だから言ったのに。風邪引くよって。

「あんたは?なんで俺に風邪引かれたら困るの?」
「聞きたい?」
「うん」
「どうしても?」
「うん」
「恋に落ちたから。」
「へ?」

少年は左目を見開いて、間抜けな声を出した。

俺は、それが可笑しくてにやりと笑う。

「一応聞いとくけど…誰に?」
「もちろん、君に。」
「…ありえねェ」
「ありえちゃうんだなぁ、これが。」


さ、行こうよ。

半ば無理矢理少年の手を取って、俺の傘に閉じ込めた。

外はどしゃ降りの雨。君はもう出られない。

「うーん、なるほど。」
「ちょっと!どこ行く気さ!?」
「俺にはたった今守りたい人ができた。すると確かに傘は狭いな。嫌いだ。」

君と同じだ。

にっこり笑いかけると、少年は困ったような顔をして

「でしょ?」

と、笑ってみせた。



『ねえレイニー?』




******************************************


一番最初に会った日は、雨の日が良いなーなんて考えながら書いたティキラビです。
それにしてもうちのティキは強引すぎる(笑)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -