※付き合ってない。けど両想い



『おおかみとツリー』



「うわあ、リア充ばっかだよ」

「そりゃそうだろ、だってクリスマスイブだもん」

「そうだけどさー」

つまんね、と拗ねた子供みたいに石ころを蹴っ飛ばす鳴越しに、きらきらのクリスマスツリーを眺めた。
なんだかんだでクリスマスは毎年こいつといる気がする。
わざわざ約束したりもするけど、鳴に会うときは大抵がばったり街中で、とかだから一緒にいること自体はまあ珍しいことじゃない。

今年はわざわざ約束したタイプだ。
今年もどうせ暇なんだろ?って挑戦状の如く鳴さまからメールがきたから。

「なんで一也モテんのに彼女作んないんだよ、嫌味か」

「んー?まあね」

お前がいるからだよ、なんて言えるはずもなくただ笑ってみせた。
そしたら小さな声で、ずるいよって。
ああ、期待させるようなこと言うなよ。
気がつかないふりするのは辛いから。
ずるいのは、どっちだ。

「見て一也、ゆきだるま!」

駅のイルミネーションを見て、鳴がきれいだとはしゃいだ。
その横顔を見て思う。
このまま、このままでいいから。
これ以上進まなくていいから。
この空間を、切り取ってしまいたい。

「来年こそはさ…クリスマスにお前の顔なんか見たくねーわ」

「そんなこと言って、どうせ来年も再来年もずっと一緒だろ」

「はは、そうかもね」

「…一緒だよ、きっとな」

願うように言っても、鳴には届いてないんだろうな。
ケーキ食べたい、なんて呑気に隣でよだれたらしてるし。

すると、頬に冷たい感触が落ちてきた。
まさかホワイトクリスマスなんて。
男ふたりのクリスマスにしてはロマンチックロマンチックすぎやしないか。
と思ったら、どんよりと暗い空から降ってきたものは、なんと液体だった。

「えっ雨!?雪じゃないの!?最悪!」

鳴がぎゃあぎゃあ騒ぎながらかばんから折り畳み傘を取り出す。
入れてよ、って無理矢理入ったら無言で押し出された。
わりと結構ショックで、ちょっと泣きそうになった。
でも傘の隙間からちらりと見えた真っ赤な耳で、もうそんなこと全てが一気に吹き飛ぶ。

勘違いとかじゃないと思う。
鳴は、俺が好きな鳴は、顔を真っ赤にして照れてたんだ。
うれしくってうれしくって、ばかみたいに心臓が騒いだ。
なんだ。こんな夜もたまにはいいじゃないか。
ねえ、レイニークリスマス。少し希望が見えたんだ。

前言撤回。切り取ったりなんかしなくていいよ。
俺はやっぱり鳴と来年も再来年も一緒にいたい。
一歩ずつでも進めるように。



『おおかみとツリー』



クリスマスカラー読みづらいw
久しぶりの御鳴で、大遅刻のクリスマスでした。
わたしは一年の中でクリスマスが一番好きなのですが、今年はあまり楽しめなかったなあ。
来年こそは思い切り楽しみたいです。

ダイヤ新刊今から楽しみ(笑)
次こそは!!鳴ちゃんをください!!
ここまで読んでくださってありがとうございました。
皆様よいお年を。



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