08:お弁当と主夫とわんこ 1 / 5 目の前にいるその人は楽しそうに鼻歌を歌っている。 主婦に混じって買い物かごを転がしながら、サブバッグを肩にかけてゆぅっくりと歩いていた。 「どぅるっ♪どぅー♪」 今ちょびっとだけ話題になっているCMのリズムを刻んでいるその人が何だか可愛く思えた。 「偶然ですね……魚住先輩」 「おわっ!あ、星尾ちゃんか、びびったー」 私、星尾美幸、スーパーで魚住先輩に会う、の巻。 私に気がついた先輩は胸辺りを押さえて驚いたと態度と表情で示した。 学校近くのスーパー、ここ安いんだよね。たまにお母さんが買ってきてって言ってくるから寄る羽目になるのです。 「魚住先輩、地元民でしたっけ?」 「そうだよー。まぁ今日は弁当の材料買いに来たからここってだけだけど」 何度も言うけれど安いからね。 「こーめーちゃあん!弁当に味噌汁あり!?俺ね、大根と油揚げの味噌汁希望!」 ≪≪prev しおりを挟む back |