01:夢心地 1 / 10

学校祭も終わり学校の熱も醒めはじめたその頃。

夏が本格的に近付いてきていた。



「……暑ッ」



ぱたりぱたりと手を揺らして自らへと風を送るがそれも虚しい出来事に終わる。


「灰葉くーん!」


窓辺で女の子達が騒ぐ。

グラウンドにいるであろうその人の名前、の後にきゃーと黄色い声が飛んだから、彼は笑顔で対応でもしたのだろうか。



灰葉香月。

数日前の学校祭を盛り上げたメンバーの1人であるその人は、容姿が綺麗故にモテモテである。


「暑い……美幸、ジュース買ってきてぇ」

「えー、」

「奢るから、ほい、頼んだ」


真麻が1000円を私に押し付けて机に伏せた。
……1階まで行くの、しんどいなぁ。



まぁいいや、奢りみたいだし行こう。


真麻に渡された1000円を手に、階段を4階から一気に駆け下りた。




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