21:『edge』 7 / 8

「何してんだてめぇ」


 口調の悪さから一瞬弥生先輩かと錯覚したが、その声は確かに登くんで。
 いつもからは予想もつかない低い声でそう言った。

 目の前にいる御小原くんは、笑う。
 暗い瞳を細めて、馬鹿にしたように笑った。


「お前の大切なもの、また壊してやろうと思って」
「っざけんな!! 俺に喧嘩売りてぇなら直接来いや!! 星尾さんまで巻き込んでんじゃねぇ!!」

 登くんが御小原くんに掴みかかる。
 今にも殴りそうな雰囲気で、さすがにまずいではないかと考えて登くんを止めようとしたが、手を伸ばす前に後ろから肩を引かれる。


「大丈夫か? これ着てろ」
「弥生先輩……」
 
 弥生先輩に赤いパーカーを渡される。
 遠慮している場合ではないので、言葉に甘えてそれを身に着けた。


「登、落ち着け」
「止めんな!! いい加減殺してやるこの糞餓鬼!」
「いいのかよ、女の前で汚ぇ本性出しまくりだぞ?」


 御小原くんは笑う。変わらずに笑っていた。
 嘲笑。彼の笑顔にはその言葉が良く似合う。


「うちのを挑発するのは止めてくれるか」

 弥生先輩が呆れたように溜め息を吐き出して、そう告げる。
 御小原くんのその向こう側、他の3人――おそらく知り合いである詠ちゃんだろうか。そちらに視線を向けた先輩が口をもう1度開いた。


「説明できるか、アホ娘」
「さぁ、知らないっ!」

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