21:『edge』 2 / 8

 御小原くんは乱雑にギターケースを近くにあった机へ置いた。
 中から出てきたのは、真っ黒なギターだ。


「お客さん」
「お客、さん?」


 呆気に取られる私を他所に、葛原先輩の表情がキラキラと輝いていく。
 宇佐美先輩は興味がなさそうで。
 詠ちゃんは弥生先輩そっくりな感じで「ちっ」と舌打ちを吐き出した。

 葛原先輩が近付いてきては、私の手を両手で包み込んだ。


「あらあらあら! 我らが『edge』に興味を持ってくれたのかしらァ? オネーサン嬉しいわァ!」

 幼い子供のように両手を掴んだままぶんぶんと上下に振り回す。


「『edge』……?」
「あたしたちのバンド名よぅ!」

 ニコニコ。
 愛想のいい表情。

 これだけだったら、女の人って間違っただけで魚住先輩が嫌いになりそうにないけれど。
 一体、何をしたのだろうか。


「これで分かってもらえるわァ」
「何が、ですか?」

 ニッコリ。
 葛原先輩は満面の笑みを浮かべた。


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