c:アンチラフメーカー 5 / 9


 嘘つきだ。
 ――結局、中学から変われてない。



 何事もないように、その日の学校も終わって。
 掃除当番を終えてから家、もとい、バイト先に向かう。

「用事、大丈夫だった?」


 バイト先につけば先についていたらしい魚住さんに声を掛けられた。
 昼休みの嘘のことだ。彼は何気なく、優しく首を傾けた。


「はい! 先生に提出するプリント忘れてたんですよねー」

 また嘘に嘘を重ねる。
 自分が黒く染まっていく気がした。

 制服に着替えて店に出ると、叔父が俺に視線を向けた。


「かづ、2番テーブルから注文取ってこい」
「えー、むーちゃんったら人遣い荒いんだからーん。はいはーい行ってきますぅ」


 叔父に声を掛けられて俺は文句のような言葉を吐き出しつつも魚住さんから逃げるように了承して店内へと歩き出す。
 指定通りのテーブルに歩いていく。やけに騒がしいな。人が多い。


「お待たせしました、ご注文を……」
「あっ、本当に灰羽だー」
「なっ、言った通りだろ! 前偶然見つけてよー」

 少しだけの期間、聞いていなかった声が再生される。
 聞きたくない声たちに固まり、それらは遠慮なくべらべらと笑いながら喋り続ける。


「うわっ、金髪!? 高校デビューってやつ!?」
「何でこんなに遠く来たんだよ、寂しいだろ? 玩具いなくなって」

 何で。
 こいつらに会わないようにわざわざ中学からかなり離れた高校にしたのに。
 2度と会いたくなんかなかったのに。

 こいつらは。
 こいつら、は、俺を中学の時にいじめてたやつらだ。


 泣くな、表情を崩すな。
 笑え。
 笑え笑え笑え笑え笑え。

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