13:天然紳士はバイト中 9 / 9

 でも、と口ごもると「登はいいのに?」とにやにや告げる。


 なんで私はこんな場所で羞恥プレイを強いられているのだろうか。
 あの、あのと口ごもり続けていると魚住先輩が現れた。

「お前らね、星尾ちゃんを困らせんじゃねぇよ」
「店員さんが出しゃばらないでくださーい」

 けたけたと弥生先輩がからかい口調を続ける。
 何だかそういうセリフって、変な脇役の不良みたいですよ、先輩。

「取り皿。ドリア分けて食うなら必要だろ」

 呆れたように魚住先輩がそう言って皿をテーブルに置いた。


「あ、ありがとうございます」

 色んな意味で。
 そう言った時に、魚住先輩と目が合った。


「あ」

 何かを見つけたようで。
 抜けた声を上げて、魚住先輩が私から視線を離さなかった。

「チョコ、ついてるわ」

 そう言って、バイトの制服から取り出したハンカチで私の口元をぎゅっと拭った。

「ん、取れた」


 にっこり笑って、魚住先輩は「じゃあ失礼」と歩いていく。


「この天然紳士めが」

 弥生先輩がそう言って、苦く笑ってみせた。




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