妃代ちゃんと○○くん3






校長室につくやいなや、会長はバンっと晴信さんの机を叩く。



「どういうことですか!」

「え?」



晴信さんは不思議そうに会長を見たあと、私に視線を移した。



「あぁ、妃代ちゃん。もう白鳥くんと青峰くんに会えたんだね。心変わりしてくれたのかな?」

『してません』



会長は「校長!」と叫んだ。



「俺が聞きたいのは婚約者が2人いるのは何故かということです!」

「やだなぁ。2人じゃないよ3人だよ」



まだいるの?



ていうかもう2人でも3人でもどうでもいいよ!!



『私はとにかくお断りします!放っておいてください……では!』



校長室を出ようとドアに手をかけた時のことだ。

反対側から誰かが開けようとしたのか、ドアノブごと手が思い切り引っ張られた。



『わっ……!?』


倒れた、と思ったけど痛みがない。

誰かに支えられていることに気がつく。



「大丈夫ですか?」



顔を上げると、少しだけ目の大きい少年。
可愛い、といわれそうな男の子。

身長は……小さいね、私と同じくらいだ。



『ありがとう……ございます』

「黒松くん。その子も一緒に連れてきてくれる?」

「あ、はい……で、なんでしょうか?僕に話って」



脱走失敗


「さぁ、みんな。彼が最後の婚約者“候補”だ」



3人目、か。



「……あぁ、じゃあこの人が以前言ってた桃瀬妃代さんですね。候補って、他にもいるってことですか?」

「あぁ、そこの2人だ。名前くらいは知ってるんじゃないかな?妃代ちゃん、その人は黒松未来【くろまつ みらい】くんだ」

『はぁ、そうですか』

「思っていたより普通の顔ですね。てっきりもう少し可愛い人がくるのかと思っていました」


何……だと?

いや、私は自分が可愛いとか思ってませんけど。
そういうこと普通、はっきり言う?


「さっき支えたとき思ったんですけど、体重重くないですか?お菓子とか食べ過ぎるのはいけないと思いますけど」



そ、そこまで太ってないし!……たぶん。
デリカシーないなこの子!


「あれ?図星で言葉も出ませんか?ねぇ、妃代先輩?」



くすりと笑いながら
挑発するように私の名前を呼ぶ黒松くん。

はっ、腹立つ!!


「おい、黒松……それは酷すぎやしないか?」



会長が控え目に言った。


「あぁ、すみません」


素直に謝った。
けれどすぐに、彼の口が弧を描き出す。



「……大和会長はそうやって弱い方を助けてるんですね」

「あ?弱い奴を助けるのは当たり前だろ」

「僕、偽善者とか嫌いなんですよねぇ。でも票は偽善者に集まりやすいんですね。大和会長を見て納得です」

「……はぁ?俺が、偽善者?」



ニコニコとしてるけどこの子、すごくひどいことばかり言ってない!?
校長室の中にとても気まずい空気が流れ出す。



「えーと……妃代ちゃん!」



晴信さんが困ったように私の名前を呼んだ。



『は、はい?』

「恋愛に興味がない?」



無理やり話を変えようとしてる気が……



『ないです。できればみなさんほっといてください』



「……だから、強制参加なんだよ?」



晴信さんが言った言葉の意図が読み取れない。



は?と聞き返す前に笑顔になった晴信さん。



「3人の中から、妃代ちゃんが好きな人を選ぶんだ。恋愛ゲーム、とでも言うべきかな?」



話はもう終わりにしようか。そういって晴信さんが立ち上がる。



「あ、この中で寮に住んでる子いたっけ?」

「……俺、寮ですけど」

「じゃあ白鳥くん、妃代ちゃんを寮まで送ってあげてね」



そういって晴信さんは私たちを校長室から追い出した。
「僕も忙しいんだよ」
といってドアをぱたりとしめた。



いや、まぁ、勝手に押しかけたけども……



「ゲームねぇ……」

「黒松」

「はい?なんでしょうか大和会長」



会長に呼ばれた黒松くんはニコリと笑った。



「興味がないなら辞退してくれても構わない」



まっすぐと黒松くんを睨みつける会長。



……悪い雰囲気再開させないでくださいよ!



会長の言葉を聞いて黒松くんは私をチラリと見た。



私に笑顔を向けて

「僕、勝負事に負けるのは嫌いなんですよ。参加させていただきます」

と言い放つ。



私をはさんでこの雰囲気はやめてほしい。



「おいおい……ひよこが困ってんぞ」



「ひよこ」って……私?



なんだか馬鹿にされてるような気がするけど助け舟ナイスです青峰さん!



「蓮先輩……ですよね?喧嘩ばかりしてることで有名な。婚約者承諾理由はあれですか、女なら誰でもいいとかそういうのですか?モテなさそうですもんねー顔怖くて」



「……」



なんなのこの子!何がしたいの!?



「それを言うなら黒松、お前もだろう。婚約者、姿も見ないで承諾したのは誰でもいいからだろ」


「それを言ってしまえば大和会長もですね。僕はそうですよ。誰でもよかった。跡取りを産んでくれる方なら誰でも」



跡取り、って?



もしかして金持ちなのか?この子。



あ、黒松って……黒松財閥?え?すごい有名だよね!?そこの息子!?



「妃代先輩、黒松財閥知ってますか?僕、そこの息子なんで、楽しい生活を送りたいなら僕を選ぶことをオススメしますよ」



跡取りを産んでくれることさえ約束していただければね。と彼は笑った。



将来の生活安定は……おいしい条件だよね。



いや、これにのる気はまったくないんだけど。



「ひよこはそんなことで選んだりしねぇだろ」



出会ったばかりのあなたが私の何を知っているんですかと言いたくなったけど、その通り。



『悪いですけど、私のことは本当に放っておいてください!で、会長、寮まで案内してください!』



「あ、あぁ」



無理やり会長を引っ張って寮まで連れて行ってもらうことにした。



ここでの生活大丈夫かなぁ
波乱が起きるような、気がする。



 

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