ハニージンジャー3






……寝てるし。

薬はいいの?



すやすやとまぁ無防備に……



机の上にコップを置いて会長をみる。

寝ている彼の表情は少しだけ幼く見えた。





どうしよう、いつ起きるかな。

ここにいるって言ったくせにいなくなるのもおかしいよなぁ。


会長の部屋綺麗だから掃除の必要もないし。

……テスト近いし机借りて勉強してようかな。




会長が寝て、しばらくたった。
……けど、起きそうにないなぁ。



……あ、そうだ。

私は立ち上がって部屋に戻る。




冷蔵庫にあったかな?
あ、あった。




見つけたものを手に取って会長の部屋へと戻った。




「妃代」

『あ、起きてたんですね』



大分良くなったかな?顔色良くなりましたね。



ちょっとキッチン借りますねと返事も聞かずにキッチンへ向かう。



手に持ってたものは、はちみつ、チューブのしょうが、ティーパック。



体の温まるはちみつジンジャーティーを作りましょう!




といってもノリで全部つっこんで終わりだけどね!


お湯を沸かして、マグカップにどんどん入れていく。
なんて楽チン。




『会長どうぞ!』

「……これは?」



怪しいものを見る目で見ないでください。



『はちみつジンジャーです。体温まりますよー』



渡そうとすると会長からストップをかけられる。

何ですか、何が不満なんですか。



甘いのは苦手なのかな?



「味見は?」

『してないですけど大丈夫ですよ』



寒いときいつも作ってるし、分量はフィーリングで大丈夫なレベルまで私は成長しました。




「味見しろよ」と会長が溜め息。



……全部私が飲んでやろうか。




会長を一瞥してはちみつジンジャーを口に含む。

刹那。

マグカップを持っていた手を引っ張られ、唇と唇が重なった。





『……っ!?』



頭をおさえつけられて、動けない。


口の中にあったぬるいはちみつジンジャーが会長の口の中へと移動する。



「ん、甘いな」


ゆるりと離れた唇から小さく呟きが漏れる。



はちみつだからか、なんてひとりごちていつの間にか会長の手へと移動していたマグカップに口をつけた。



「あったかい」



そういってふにゃりと笑う。



『そんなに元気があるならもう大丈夫ですねサヨナラ』

「おいおいおい、やるなら最後までやり遂げろよ」




へらへらと笑う会長。

寝たら本調子に戻ったんですね良かったですね、あー心配して損した!



さっきまで可愛かったのに腹立つ通常モードになってしまった、ショック。



私から邪悪なオーラが出ていたようで、会長が怖いわと苦笑。



「冗談だよ。もう、本当に大丈夫。ありがとな」





……会長が大丈夫って言うと心配になるんだけど。

上半身を起こした会長がへらりと笑って手を振った。



『何かあったら電話かメールしてくださいね!』

「はいはい……俺母ちゃん何人いるんだろ」



私は「母ちゃん」じゃないんですけど。

卓哉ママンはともかく私は母ちゃんじゃないです。





ドアに手をかけた時、会長が思い出したように「あっ」と声を漏らした。




「風邪、移してたらごめんな?」



トン、と唇に指を当てて悪戯っぽく微笑む。
あぁ、わざとらしい。




『大・丈・夫です!』


べぇっと舌をだしてみせて、わざとらしく大きな音をたててドアを閉めた。

 

そう簡単に風邪が移ってたまるか!













『ぶぇっくし!!』

「桃瀬はおっさんみたいな咳をするんだな」



移った。

ものの見事に移った。

あのクソ会長呪う。



「大丈夫か?」


蓮の心配そうな声を聞いて、大丈夫だというように首を縦に振った。



昨日とは打って変わって、元気な明るい声の会長がへらりと笑って教室のドアから顔を覗かせた。



「やぁやぁおはよう諸君!」




なにそのテンション。



「あれー白鳥先輩どったのー?」
「いやー妃代に風邪移したかなと思ったら、案の定」


悪びれた様子もなくそう言ってみせた。


「昨日はありがとな、妃代」


そういって、笑って。

あぁ、お礼を言いにきただけか。



どうってことない。
そう伝えるように首を横に振る。




「風邪は人に移した方が早く治るって、あながち嘘ではないのかもな」




会長の細長い指が私の額に触れる。


あ、手冷たくて気持ちいい。




会長が蓮をちらりと見てニヤリと笑う。

なんかいやな予感しかしない。






「なぁー妃代、風邪俺に移してもいいぞ、昨日みたいに」





妖艶に、舌をだして唇で弧を描く。



「昨日みたいにって……何が……」

御門くんが、ぽかんとしながら首を傾けた。


「何って……なぁ?」



目を細めて私を見る。


「桃瀬……」


汚い物を見る目で見ないでください陽くん。


額に触れていた指が私の唇へと移動した。





この人絶対楽しんでるよね?




「うまかったよ」



普段より低い声で囁いて。

にこりと笑う。


……うまかった?
 
あぁ、はちみつジンジャーが「美味かった」ってこと?

美味しかったようでなによりです。



ほら、そんなわざとらしい言い方するから勘違いした人が出てきますよ。




「妃代ちゃん……不潔」
『たぶん勘違いしてる御門くんの想像力の方が不潔』


「白鳥シバく」
「おーおーナニを想像したんだぁこのムッツリ野郎」



あぁ、もう。


ここにいたら風邪悪化する。




「美味いのははちみつジンジャーティーの話だよバーカ」と嘲る会長の声を背に私は保健室へと向かった。




心配してたのがバカみたいだ。



……元気になって、よかった。


 

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