※真穂がゴミ箱部隊にいく設定もあったので、その設定。



寒い風が吹く。
セットしたらしい髪の毛が崩れたようで、彼女は少しだけ不満気な声を漏らした。

「寒いー!」

強い風は地に落ちた雪を舞い上がらせて、まるで雪が降っているかのように見せかけてくる。
彼女の文句は俺以外の誰にも届くことはなく、何処かへ消え去っていった。
リヤンも足が冷たいようで、俺の顔を見て訴えかけてくる。

お世辞にも綺麗とは言えない汚い赤色に染まった雪を見て、俺は視線を下げたまま目を細めた。
自分たちよりも数倍もいたくせに、弱々しいものだ。

「さぁ、次はどうしましょうか!」
「どうしたいの? エリートさん?」

元エリートである彼女にそういうと、彼女は不満そうに「嫌味っぽいですよ!」だなんて言う。

「もっと前線に行ってみましょうか!」

一歩。彼女が踏み出した。
ざくりと音を立てて雪がきしむ。
ふんふんと不器用な鼻歌を歌いながら歩き出していく。

「好戦的だね、今はたった2人しかいないのに」
「私と久住さんがいれば百人力なのです!!」

へろりと笑ってこちらを振り向いた。
彼女の笑顔は、太陽みたいだ。
きらきら輝いて、周りを照らしてくれる。

「久住さんになら何処へでもついていきますよ! 例え水の中でも死地へでも!」

笑って冗談を言い放つ。
そうやって、こんな戦争の中で笑うのは異常だと誰かが言う。
けれど、それでいいだろう?
死んだ顔して臨むよりは、全然いい。

「じゃあ、死にに行こっか」
「いえっさー!!」

軍のためにだとか死ぬつもりは一切ない。馬鹿馬鹿しい。
でも、まぁ。君を守れるとか、君と一緒に死ねるなら、それでいいかもしれないな。


小さくレクイエムを歌いながら歩く。
彼女は俺に「優しい」なんて告げるけど、これが死者の鎮魂ためじゃなくて初めて出会った時君が気に入ってくれたから……綺麗だと言ってくれたから歌ってるだなんて、言ったら。
君が歌を喜んでくれるから歌ってるだなんて言ったら、君は笑ってくれるのだろうか。




何処へでも行けるから






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