気が付けばまた「あの世界」。
白い世界。
誰かの啜り泣く声が聞こえる。
その少女は、笑っていた。
涙を落としながら笑っていた。
それは誰の記憶かわからない。
綺麗に輝く銀髪の女性と白髪のロングの少女が映る。
白髪の少女の隣には、高身長の赤髪の人物が立って笑っていた。
“……つまらないわ”
“クイーン、君はそれしか言ってないよ
僕の作った世界、気に入らないの?”
背景は見慣れてしまった世界だった。
“刺激がないのよ……そうだ!余所の世界からアリスを連れてきたらどうかしら?綺麗な世界だもの、アリスもきっと喜んでくれるわ”
女性からは悪意なんて感じられない。
純粋に笑っていた。
“余所者……僕は嫌だなぁ”
“お願いよ、私の可愛い白ウサギちゃん。この綺麗な世界で、みんなで仲良くしましょうよ”
“……仕方ないなぁ”
“白ウサギはクイーンに弱いのさぁ”
赤髪の人物が馬鹿にしたように横から口をはさむ。
少女はそれに顔を赤くした。
“うるさいなぁ!エニグマは黙っててよ!ばか!”
幸せそうな世界がフェードアウトした。
目に映る「誰かの記憶」は流れていく。
次には見慣れた金髪が立っていた。
先ほど見た銀髪の女性が赤にまみれて倒れている。
あぁ、これがさっきの……
「ごめんね」
白い世界で泣きながら少女がそう言った。
「また、世界は君が気に入らない世界だったね」
ぽつりぽつりと少女が呟く。
「待ってて、クイーン」
「僕が」
「もう1度世界を」
「作り直してあげるからね」
少女は私の方を向く。
赤い目が、涙で濡れている。
少女は確かに、口を歪めて笑っていた。
「バイバイ、アリス」
―Good bye, Wonder Land―
「……またね?」
[*前] | [次#]
[しおりを挟む]
戻る