賑わう空港。
私はひとりぼっち、なう、です。
東京上陸!なんてウキウキした気持ちで私はそこにいた。
愛しの旦那様、綾瀬瑛太の文字を電話帳ですぐに見つけて電話をかける。
迎えに着てくれるはずだから、なんてにやける顔を抑える。
……しかし電話は繋がらなかった。
あれ?
しばらく経ってからようやく繋がった向こう側から、声は聞こえてこなかった。
「えーちゃん!着いた!」
私のハイテンションな声に相手は無言のままだった。
……ね、寝てる?
「えーちゃん?えーちゃん……えーちゃん!」
『……う、わっ……悪い、寝てた』
眠たそうな声が機会越しに聞こえる。
こちらから声を掛けてなければ寝てしまいそうな雰囲気。
『……ごめん、今から行く、うん、今から……ちょっと待ってて』
事故起こしそうだな……
彼に気をつけてと告げて電話を切った。
……普通彼女が来るって行ってるのに寝坊する!?
拗ねてやる。
激おこぷんぷん丸なんだからね!
見慣れない土地……しかも地元と違って大都会でただ1人。
なんだか、怖い。
お兄ちゃんとかお兄ちゃんの友達の晃くんも上京してるから、どっちかに頼めばよかったな、なんて。
よく考えればえーちゃんの寝坊はいつものことだったし。
スマホを手にしてツイッターを開く。
春休みだからか、昼前なのにも関わらず学生がたくさんいる。
普段だったら誰かがいう「お前ら授業受けろ」という呟きもなかった。
〈まーちゃむ:旦那様寝坊で空港ぼっちなう〉
悲しそうな顔文字も一緒に付けて、そう呟きを投稿した。
すぐに誰かが反応し、リプライが返ってくる。
〈ツバサ@まーちゃむ:リア充ざまぁwww俺が迎えに行ってやんよ〉
〈まーちゃむ@ツバサ:結構ですwww〉
即返事。
ツバサさんというのは実況仲間。
よく公式の生放送に出演していて、マスクをしていてもわかるほどチャラい。
実況動画でも言動がちょいちょいチャラい。
でも声が良くて、トークもゲーム中の絶叫も面白いから人気あるんだよね。
何度かやり取りをしてからツイッターを閉じる。
タイミング良く、電話が掛かってきた。
『着いた。今どこ?』
「降りたとこの椅子」
こんなので伝わったのか。
しばらく経って視界に映ったのはこちらに走ってくるえーちゃん。
人ごみの中でもすぐにえーちゃんを見つけることが可能です。
なんて素敵な機能なの、まーちゃむ・アイズ。
「悪い、待たせた」
「……許さない!」
本当は会えて嬉しい。
久々に見てもやはりイケメンだ輝いてる、えーちゃん輝いてるよ!きらっきらだよ!
ハグしたいハグしたいギューッとしたい!
けどあえて拗ねてみる。
唇を尖らせるとえーちゃんは苦笑した。
「怒ってるの?」
「怒ってるの」
「それは困った」
本当に困ってるようには聞こえない、棒読みじゃないか。
「悪かった」
そういって、正面から抱きしめられる。
よしよし、と子供をあやすように頭を撫でてきた。
思わず声が、笑い声が漏れてしまった。
嬉しくて。
「機嫌直った?」
「うん」
「それは良かった」
にこ、とえーちゃんが笑う。
─会えるだけでご機嫌MAXだなんて、─
(何て私は単純なのでしょう!)
「あ、お久しぶりです」
「こちらこそお久しぶりです(何で敬語?)」
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