無縁なジェラシー?2


雄大の家について、家の電気がついているのを確認した。

あー、まだ起きてる。



「ありがとねー」

「いやぁ、こっちこそ悪いな、彼氏いんのに」

「いーよ、別に雄大なんか」


冗談のようにそう言う。

引き止めてくれないんだもん、あの馬鹿。
ばーかばーか。



ちゅ、と。
軽くリップ音が響く。


柔らかいものが唇にふにりと触れた。



「……は?」

「おやすみ」



相模は手を振って来た道を戻っていく。


何故あいつは当たり前のようにキスをした?

相模、私のこと好きなの?
……いや、絶対ない。軽いノリだ。もうアメリカとか行けよ挨拶でキスするなら。



深い意味がないのもわかっていたし、酔っ払っててどうでもよくなったのもあってすぐにマンションの入り口をくぐった。



階段を上がる。3階の302号室。


チャイムを鳴らしてもドアは開かなかった。
もう一度鳴らす。

やっぱり開かない。
あれぇ?ドアノブに手をかける。がちゃがちゃ鳴るだけだ。鍵が閉まってる、当たり前だ。


チャイムを更に鳴らすとゆっくりとドアが開いた。



立っている雄大は眠たげで、眉をしかめながらシャツに手を突っ込んでお腹を掻いていた。



「……明菜ちゃん、また飲み過ぎたっしょ」


「遅い雄大」

「ごめん、寝てた……」



本来なら私が謝るべきなんだけど。

電気つけたまま寝ちゃっていたらしい。
家に上がらせてもらって荷物と上着を投げ捨てる。


はぁ、家の中なのに寒い。
寝てたから暖房切ってたんだろうな。


ぴ、とエアコンの起動音が耳に届いた。



「シャワー借りるね」

「んー。着替え持ってくからいいよ入ってな」



ほわほわした頭で風呂場に向かう。

シャワーを適当に浴びて勢い良く出ると私が以前放置していった着替えが綺麗に洗濯されたものが置いてある。


さすがに下着は置いてなかったので、先ほどまで身につけていた下着を再び身につけて、着替えを持って脱衣所を出る。



「……ちょ、っと!服くらい着てよ!」


下着姿の私を見て雄大が顔を赤くして慌てていた。
ぺいっと服を投げ捨てて
「着せて」
そう命令……お願いをする。



雄大は目を逸らしながらも服を私に着せてくれる。

着終わったところで雄大の足を引っ掛けて彼を床に押し倒した。



「……ッ、明菜っ、ちゃん!」


背中が痛いのか雄大は顔を歪める。


そして、驚いたように目を開いていた。




「ゆーだい」

キスしてやろうか。なんて。



「……ムラってしない?」


私の言葉に雄大は目を逸らしながら眉を垂らした。



「……自分の安売りしないの」

「安売りぃ?いいじゃん、付き合ってるんだから」


「それでもさ。まだ1年だよ」



まだ1年って。

もう1年の間違いだろう!



ちゅーもないってどうですか?おかしくないですか?


君は健全な男じゃあないのかね?



顔を近付けると雄大は気まずそうな顔をして顔をそらす。

顔は赤いけれど、ぎゅっと口に力を込めていた。


逆じゃないの、普通。

女の子がそう恥じらうもんじゃないの。




「明菜ちゃん、」

「もう、いいや」



嫌そうにされちゃする気も失せる。

たぶんね、キスしていい?と問うたらいいよって返ってくるよ。



だって雄大だもん。イエスマンだもん。




キスって軽くできるものだと思ってた。
さっきの相模みたいに。

そうでもないみたいだ。



雄大の上から退けて私はソファの上に転がる。

目を閉じて寝たふりをする。
私は酔っぱらってるからすぐに寝落ちしました、ぐー。



「……明菜ちゃん、ベッドで寝なよ。風邪引くから」
「髪の毛乾かさないと風邪引くって」
「……もう、寝たの?」



優しい声、控えめな声量。

雄大は一度何処かへ行った。
足音が戻ってきたのですぐに雄大が戻ってきたことがわかる。


ふわり、と暖かい感触。
毛布をかけてくれたみたいだ。



「おやすみ」


雄大の声が上から降ってきた。

甘い優しい雄大の声に眠気が誘われる。


頭に微かに触れた手は、偶然なのか意図的なのかはわからなかった。




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