rain,rain...



 雨が降ってくる。
 最近、本当雨多いなぁ。

 私は嬉しいけど。

 今日も電車には彼が乗って……

 ……来ない?


 不思議なことに、彼は電車に乗ってこなかった。

 ……あれ?


 雨、降ってるのに。
 時間、違うのに乗ったのかなぁ。


「あんた、避けられてるんじゃない?」
「は?」


 真美にそのことを言うと、そんなひと言が私に向かって飛んできた。


「何で」
「だってさ、たいした知り合いじゃない人から馴れ馴れしくされても、嬉しくないじゃん」


  私、馴れ馴れしくした覚えないよ。


「視線にうんざりしたんじゃん?」


 真美は笑ってそう言った。
 帰り。
 トボトボと歩いていると前の方に灰原さんの姿。

 ……話しかけても、いいだろうか?
 よし、思い切って、


「はっ……灰原さん!!」

 そう呼びかけると、彼は「えっ」と言って振り返った。

「あ、こんにちは……」


 元気がない様子の灰原さん。


「どうしたんですか?」
「何が?」
「元気、ないじゃないですか。あ……違ったらすみません」

 あぁ、と灰原さんは笑う。


「今日折角グラウンド使える日だったのに、雨降っちゃったから……」

 運動部なんだ……

「何部なんですか?」
「君の彼氏と同じ部活だよ」


 え? 彼氏って、誰のこと?
 彼氏いない歴=年齢なんですけど。


「昨日、一緒に帰ってたでしょ? 大輔と。俺の後輩なんだ、あの子」

 えーっと……

「……弟です、大輔は」


 そういえば、名前まだ言ってなかったなぁ。

「は」

 驚いたように目を見開く灰原さん。
 そして、小さく笑った


「だっせ、俺……」
「あ、あの……すみません」
「は?」


“最近雨降るのあんたのせいじゃない……?”


 冗談交じりに真美が言った言葉を思い出す。
 もしかして、もしかして。
 本当に、私のせいなんじゃ……


「雨降ったの、私のせいかもしれないです……逆さてるてる坊主なんて作るから……灰原さんの野球の邪魔してしまって」

 そういうと灰原さんは笑って。
「おまじないなんだから、そんなの。てか、何で逆さまに?」
 不思議そうに言う彼。
 よし、言うんだ。


「……雨が降ったら」

 言うんだ、私!!

「……灰原さんに会えるから、です。だから雨が降って欲しくて、」
 恥ずかしくて下を向く。顔、見れない……


「……」

 しばらくの間無言が続く……言わなきゃ良かった。

「あの」
「……嫉妬してたんだ」
「はい?」


 嫉妬? 灰原さんが?誰に?

「大輔が、君の彼氏なんだな、って」

 自虐的に彼は笑った。


 え? え?
 状況が理解できない私をみて、灰原さんはもう1度笑った。


「雨が降ると、部活はできないけど……いいこともあるんだ」

 そういって灰原さんは私の頭に手を乗せた。


「雨の日は、君に会えるから」


 ――ずっと前から、好きでした。
 その言葉は、人混みの中でも、はっきりと聞き取れた。














 Rain,Rain,Tomorrow

 毎日雨ばかり願ってた。
 全てのきっかけは“雨”だったから。

 Rain,Rain,Tomorrow

(明日も雨が降ればいい!!)





Fin




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