恋人のイエスマン1

付き合って1年経って思ったの。


雄大は私と付き合いたくて付き合ってるんじゃないんじゃないかって。



君は断ることのできない人間だから。


私に告白されて断れずに、流れで付き合ってるんじゃないかなって。




その疑いの理由の1つとして。

彼は、手を出してこないのです。一切。





「おはよう、明菜ちゃん」


彼の声、それに加えて開けられたカーテンの隙間から差し込む朝の日差し。

それらで私は意識を取り戻し、ゆっくりと目を開けた。



「……おはよ」

「昨日大分飲んでたでしょ?二日酔いは?大丈夫?」

「……ちょっと頭痛い」


目をこすりながら窓際に立っているからか光に包まれている雄大を見た。

まぶしくて目を細める。



「飲み会行って終電逃した」

そんな理由で急に泊まりに来たのにも関わらず雄大は嫌な顔せずに泊まることを許可してくれた。


同じ会社のくせに色んな仕事を受け入れる彼は残業で、飲み会には参加してなかった。

スーツ脱ぎかけ姿だったから仕事が終わって帰ってきたばかりだったんだろうな。



「薬出しとくよ。鍵置いとくから出るとき閉めといてね」

「一緒に出社すればいいじゃん。まだ出るのは早いんじゃない?」


昨日のことを考えながら下に向いていた視線を朝早くからスーツ姿の雄大に戻す。

彼は苦笑した。



「一緒に行きたいところだけど、仕事がね」

「……君、はいはい言うから仕事たまるんじゃない?」

「でも頼られるんだから頑張りたいよ」


うーん、良いやつ。

でもクソ上司たちは頼っているというよりは、雄大が拒否しないのを良いことに押し付けているんだよ。
気付けそこに。



早くから出社した雄大を見送って私も仕事の準備を始める。


雄大の仕事、手伝えるものは手伝おうかな。

でもそれで上司の矛先が私に代わるのも嫌だよなぁ。
上司も自分の仕事自分でやれって。



せっかくだからとお弁当をありあわせで作る。2人分。



置かれていた薬を軽くパンを食べた後に飲んで雄大の家を出る。


鍵を閉めてポケットに仕舞い、歩いて会社へと向かった。




会社につくと雄大の席の近くに部長が立っている。

何やら話しているようで……というか、また仕事を押しつけようとしているようで。



「浜崎ー、忙しいときに悪いがこれも頼めるか?」


「あ、はい──……」
「部長、今の時期皆忙しくて納期に追われてるんですよ。浜崎くんは特に仕事量も多いし……これ以上増やされると間に合わない危険性も出てきます」


控えめ女性風に部長と雄大に近付いて意見する。



私は何故だか部長に気に入られているらしく、部長はにっこり笑顔になった。



「仕事のできる男性ってかっこいいですよね、部長」

ははは、わざとらしいぶってる女ごっこ。

私の言葉で自分で仕事をする気になったのか、部長は資料を自分の席へと持ち帰っていった。



部長がいなくなってから、雄大の頬を引っ張りつねる。



「い、痛いよ明菜ちゃん!」

「何で更に負担を増やそうとするのか!」

「いやでも任されたからには」

「増やして仕事間に合わなくなるほうが迷惑だから!」


「間に合わせるから!」



間に合わせるから、じゃないよ。

それで無理されて倒れられても困んの、心配になんの。


頼むから無理も無茶もしないでよ、まったく。


溜め息をはいて私は自分の席に戻って自分の仕事に手をつけた。







昼休みになっても、やつはパソコンの画面と睨めっこ。



「ゆーうだいっ」

「んー」


立っている私を見もせずに聞いてもいないんじゃないかという返事を返してくる。



「お弁当」

「えぁ、ありがとう」


差し出したお弁当に、ようやく彼はこちらを見る。

優しく笑ってお弁当を受け取った。



「勝手に冷蔵庫開けたけど」

「んー、いいよいいよ」


嬉しい。そういって机にお弁当を置いた。


お昼休み終わっちゃいますけどー?その調子じゃ。


まだ雄大はパソコンくんと睨めっこだ。

キリのいいところ、とか言って続けてくうちにお昼休み終わるんだろう。



「雄大くんお昼休み終わっちゃいますよー?」

「うーん、あとちょっと」

君のあとちょっとは長いんですけれどね。



私は休憩室に向かう。


「おつかれ」



そこには、相模がいた。
仕事では隣の席な同僚。


私と同じ時期に入社したのは雄大と相模だけで、この2人が一番話しやすい。
同じ歳だしね。






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