four

 どこからか拍手が聞こえる。後ろから、ゆっくりとした足取りで死神が近付いてきた。


「……死神さん?」
「はい、オメデトウゴザイマス」

 死神はニコリと笑った。

「次に目覚めた時には、あなたの望む世界になっていることでしょう」
「……そう」

 よかった。
 戻ってくる、日常が。たった1人が欠けた日常が。

 でも

「やっぱり朽木は、好きになれない。嘘をつくなんて」

 おや、と死神は言葉を零した。

 今までのすべてを見ていたかのように。笑う状況でもないのに笑っている。
 ……気持ち悪い。


「私は『王様』が自覚できるものとは一言も言っておりませんよ?」

 自覚できない?
 それってつまり……王様自身も、自分が王様であると理解できないということだよね?


「勘違いされましたか?」


 くすり、と嘲笑する死神。


 待って。
 待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って。


 何それ。嫌な感触がする。
 私を見ずに死神は話し続ける。


「さぁさぁ、お目覚めの時間です。

……どうぞ、お幸せに」






―――
――






「うわぁぁあああぁぁああああ!!!!」

 叫んだ。声の出る限り叫んだ。
 白い部屋。どこだここは、病院?

 驚いた顔をした看護師が部屋に入ってきた。


「目が覚めたのね!?」
「今、何時……?」
「8時よ」


 8時。学校の時間、今日は平日。


「放せ!!」


 私を抑えようとする看護師を押しのけて、ベッドから飛び降りて、走る。
 私を止める言葉も聞こえない。
 ただひたすら、学校へと走って行った。

 体中が痛い。火傷のような痛み。
 自覚がない?嘘だ。

 だってそれじゃあ。
 私が王様かもしれないということじゃないか。


 いつも通りの変わらない学校に駆け込んだ。遅刻ギリギリで、人が全然いない。

 自分の教室のドアを、勢いよく開けた。




「あ、茜おはよー」





 南が笑顔で笑う。

「おーす、東条!」

 国木田が明るく、手を上げる。
 他にも、みんな。
 みんな笑顔だ。
 元気に、何事もなかったように。

 ……約1名、あいつがいない。
 よかった。
 よかったよかったよかったよかったよかった。

 みんな生き返った。
 夢だったかのように、誰も辛そうな顔をしていない。


 私は王様じゃなかった。
 朽木が王様だった。


「どうしたの、茜」
「なんでもないよー、そういえば私、変な夢みてさぁ……」



 朽木には悪いけど。
 やっぱり私の生き方が正しいの。







―――





 学校が火災にあってから数日。
 何人かの人間が野次馬のようにその学校の外に立っていた。

 噂話をするように、話をしている。


「やっぱり酷いわねー……」
「この学校、取り壊しになるんだって?」


 女性は辛そうな視線を焼けた学校に向けた。

「逃げ遅れたクラスもあるらしいわ」
「そうそう、ほとんどの子が死んだって……」

 ほとんどは良い言い方過ぎた、と女性は言葉を言い直す。




「1人だけしか助からなかったクラスがあるんだって。
助かったその子は……何もなかったかのように笑っているみたいよ」







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