three

南と浜田、2人にはさまれる。
これで全員。

もうクラスメートは他にいない。


「ねぇ、やめようよ……もうこれしかいないんだからさ、王様は名乗り出よう?」
「死にたくないんだよ!! 僕は生きていたい!!」


 まるで話を聞いていない様子だ。だめだ、きっと2人共話が通じない。

 頭を押さえたまま、朽木はゆっくりと立ち上がった。
 ……本当、よく生きていたな。



「どっちが王様なの!? 早く、早く死んでよ……もう嫌だ、終わらせたいんだよぉ!!」



 浜田が叫ぶ。
 私だって、終わらせたい。

 ……口調からして、浜田は王様じゃないのか?


 また銃声が響く。重たそうな音。
 次は浜田の腕が飛んだ。

 浜田は痛みで叫ぶ。

 撃った本人……南は笑顔だった。涙を流しながら、笑っていた。


「……っえ、何で……何で何で何でぇ!?」
「うるさい役立たずなの陸くん。翔くん、生きてるじゃん」


 もう1度南が引き金を引いた。
 浜田が、吹っ飛ぶ。

 それを見て、南はおかしそうに笑っていた。


「ふふふふ、あー……やっぱり複数人行動するよねぇ、茜。1人だと怖いもんねぇ? ねぇ?」



 可愛らしい南が怖い。

 何かに取りつかれているみたいだ。死神に取りつかれたのか?


「……南が王様なの?」



 信じたくないのに。
 南が王様だなんて、嫌だ。

 「うふふふ、あは、おうさまぁ? おーさまぁ。そう、そうだねぇ」


 泣きながら、笑い続けて。


「私が王様なのかも、しれないねぇ!! あはははははっ!」


 本気で、言っているのか。
 笑いをやめて、銃口を私に向けた。



「ごめんね、バイバイ、茜」



 あり得ないほど冷静で。冷めていて。
 それが誰なのかと、錯覚するくらいだった。





 ぱぁん。
 




 銃声が近くで響いた。
 私が、私の銃が。

 銃口から煙を吐き出している。



 南が、少し遠くで倒れている。





「――ほら、な。殺したろ」





 殺した。私が殺した。

 南を?
 私が?

 ワタシガコロシタノ?

 無意識のうちに、体が動いたんだ。死にたくなかったから。



「……あ?」


 少し黙った後に、朽木が声を漏らした。
 静かな空間に2人だけが残る。


東条茜。
朽木翔。
国木田悠真。
浜田陸。
古本南。


 5人の名前を頭の中で繰り返し続けた。


 朽木は名簿を確認している。
 片手で頭を押さえながら。


「……終わらない?」


どうして。


「教室には生きてる奴はいなかった……間違ってるはずもない。人数も間違ってない」


 なんで。
 最悪だ。

 朽木は名簿を何度も確認していた。
 ねぇ、どうして?



「やっぱり、俺ら以外で生きてる奴はいな――……」


 ゴリ、と軽い音がする。
 私は銃を朽木に突き付けた。


 あぁ、ようやく驚いた顔を見せた。焦るような表情を見せた。




「……お、い?」

「――……騙したの?」


 そうだ。
 もういない。
 みんないない。


「自分が王様だって黙って、最後に私を殺すつもりだったの?」

 安全にしてから。
 自分の身の危険を減らしてから。

 最悪だ。
 裏切り者嘘つき野郎。やっぱり信用なんて、できなかった。


「おい、待て……俺は、」



「バイバイ」



 バイバイ、王様。
 間近にある銃が、もう1度銃弾を吐き出した。






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