薄れゆく体温


燃える、燃える

私の居場所。




隣国からの、突然の奇襲。



仲間が倒れていく。
赤くなっていく。
冷たく、なっていく。



相手は散々私たちの城で暴れて、仲間の命を奪って、城を燃やしていなくなった。





戦国時代。

領土争いが絶えないこの時代で、こんなことは至極当たり前のことなのかもしれない。







だけど、どうして。



どうして、大好きなみんながいなくなったの。
燃やされてしまったの。
私は生きているの。



隠れろ、だなんて彼の優しさにすがらなきゃよかった。



嫌だ嫌だ嫌だ。



置いてかないでよ。






燃える城の中を駆け巡る。


ほんのわずか。

息のある人、動いてる人に安堵して、その人たちに城から出るように命じる。


姫様は?なんて心配そうな顔をされたから「私はまだ元気があるから大丈夫な人を探す」と伝えてその場を離れた。



城の最上階。

彼のいる場所へと向かう。




「義孝!!」


愛しい人の名前を呼んで部屋に入ると、そこにいたのは全身真っ赤になって寝転んでいる彼の姿が目に入る。



あぁ、遅かった。


崩れ落ちそうになったとき、小さな声で彼が私の名前を呼んだのが聞こえた。


「……美優、無事か?……他の奴らは?」


「何で……っ!義孝は人の心配してる暇なんてないよね!?」



なんでこの人は、こんなときまで他の人の心配をしているの?
どうしてそんなに優しいの?


弱々しく笑った彼を見て息苦しくなる。



嫌だ、いなくならないで。

そう、心の中でつぶやいて。



「今手当を……」

「いらねぇ、から」



私が動き出そうとしたところを腕を掴んで制止する。


途切れ途切れの言葉がやたらと耳に残った。




「だから……話、聞いてくれっか?」

「話、?」



あぁ、といって笑う彼。


聞きたくない、なんて伝えられない。
でも、聞いてはいけない気がした。

聞いたら、義孝がいなくなってしまうような気がした。




「……どこでもいい、この国を出ろ」


ゆっくりと言葉を紡ぐ彼。
言葉が詰まって出てこない私。



「俺らと交流のある……そう、武田とか。どこでもいい、お前らが酷い扱いをされないところなら、どこでも」

「……なに、言ってるの?」




ようやく出てきた言葉はこれだけの長さが精一杯で。


義孝の顔を見れなかった。



「生きてる奴らつれて……行け」

「嫌だよ!!」


ずっとここで育ってきたんだよ。

ずっと、貴方のそばにいたんだよ。
これからも一緒にいたいの、そばにいさせてほしい。


身分なんて気にすんな、って言ってくれて。
ずっとそばにいてくれて。
正室に娶ってくれたじゃん。



「私は、義孝から離れない!!」


だからね、今度は私がそばにいるよ。


義孝となら、この火の中消えてしまっても構わないから。



貴方から離れたくないよ。
ずっと育ったこの国から……城から、離れたくない。




「美優ッ!!」


普段とは違う厳しい顔つきで、声を張り上げる。




「……もう、負けたんだよ」


そういって、悲しそうな顔をする。


違う、そんな顔が見たいんじゃないよ。



「……じゃあ、義孝も行こう……?また、みんなで、やり直そう……?」


失ったものは多過ぎる。

でも、できる限りやり直そうよ。



義孝の手を握って精一杯笑いかけた。

目に映るのは悲しそうに笑う彼。





「俺はもう、無理だよ……」



苦しそうに、そう呟いて。

最期の力を振り絞って、私の手を掴んだ。




「美優、幸せに、なれ」


「無理……無理だよ」


「無理じゃねぇ……俺のことなんざ、忘れちまえ」


忘れたくない、忘れられない。


「……嫌」


いつものようにニカリと笑う顔も、無理をしてるようにしか見えない。




火の回りが、思いのほか早くて城ももうそんなもたないようだ。


どんどん小さくなっていく声を必死に拾い集める。



「美優……最期の願い、聞いて……くれっか?」



最期なんて言わないでよ。

喉からでかかった言葉を止める。



……わかってるよ、もう、義孝はダメなんだよね。
今、一生懸命最後の力を振り絞ってるんだって。



認めたくなくて。
……でも、認めなきゃいけない事実で。





「抱きしめて、いて……ほしい」


なんて、柄にもないお願いをした彼。



力いっぱい抱きしめて。

大好きな着物に血がついてしまっても構わないから。



何度も名前を呼んで、呼ばれて。
赤い赤い嫌な温かさを感じて。

どんどん冷たくなっていく彼に、涙を流して。



「……悪、ぃ……俺が、幸せに、してやりたかった……のに、なぁ……ッ」


途切れていく言葉。




普段と違う彼の弱々しい声と力。


段々とうすれゆく彼の体温に、私はただただ涙を流していた。






「義孝がいないと……幸せになんてなれっこないッ……!」



ぬくもりを失った彼から離れて、城から離れて。




義孝の言葉通り、生き残った人たちと他の国へと向かう。

私たちの国と仲が良かった、同盟を結んでいた国へ。






到着して事情を話せば、歓迎されて優しく迎え入れてくれた。



何度も、義孝を失った私を慰めたい、妻にしたいって話ももらった。


だけど、私は誰も受け入れなかった。
側室はおろか、正室にもならなかった。






私にはずっと、義孝だけなんだ。




きっと、生まれ変わっても
私は君に、恋をする。




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