溺欲彼氏1

ちかちかのネオンに照らされる。

ここから早く離れようなんて、雄大のコートを控えめに掴んだ。




雄大は何かを考え込んだ後、私を見つめる。



「……ホテル、入る?」


興味があるんですか?



「違う男連れて入るとか私はビッチか」

「ははは」


目が笑ってないし今の乾いた笑い声低いしで怖いんですけど。

ごめんなさいごめんなさい。




「……雄大の家、行こう?」


私の言葉で雄大は私の手を引いた。



あ、恋人繋ぎ。
あったかいなぁ。



景色がちかちかのネオン街から見慣れた駅前へと変わる。


「雄大ご飯は?」

「何食べたい?」

「えー、手料理」


じゃあやっぱり急いで帰ろう、だなんて。


雄大の家食材まだあったっけ、今日は確認してなかったな。

何かしらは残ってるか。
雄大に何か作ってもらおう、楽しみだなぁ。



雪が降ってきそうな空を眺める。

降りそうで降らない、濁った空だ。



マンションの階段を上っていく。

3階に到着して、雄大は赤くなった手で鍵を鞄から探す。



見つけた鍵で部屋のドアを開けて、軽く私の背中を叩いて入るように促してきた。


人がいなかった部屋は暗くて、冷たい。

本当に仕事帰りだったのね。




「明菜ちゃん」



がちゃん、とドアの鍵が閉められた音が耳に届く。

その音は酷く重たく感じた。



呼ばれたので反応しようと振り返ると、唇にやわらかい感触が届く。


暗くてよくわからないけど、キスをされている。




電気、電気どこでつけるんだっけ。

あぁ、いいや。つけなくてもいいか。



どさりと重たいものが落ちた音。
鞄でも投げ捨てたのだろう。


腕を掴んでいた手が背中に回る。

鞄を投げたことによって空いたもう片方の手も抱きしめるように背へと触れた。



私も真似をするように雄大を抱きしめる。




1年分のキスは濃厚で。


私の酸素を奪うように彼は貪る。

何度も角度を変えて、唇を重ねる。



応えるだけじゃ足りなくて、自分から舌を味わうように絡めた。




寒いはずなのに、熱いね。

なんて照れを誤魔化したい。



「……雄大、」



唇が離れて、小さく彼の名前を呼ぶ。


離れた唇は、私の首元へと触れた。

生暖かい感触。
……え、ちょっと。


ここ、玄関なんですけど。


そろそろ部屋に入りたいんですけど。




「ちょ、っと」



私の声を聞いて雄大は離れた。


私の体を抱きしめていた腕も離れて、靴を脱いだらしく革靴が床に擦れる音がした。



「うん、ごめん……」



ぱちりと電気がつけられる。

鞄を拾った雄大が部屋のほうへと歩いて行った。


背を向けられているから彼がどんな表情をしているかなんて、わかりはしない。




「……何、作ろっか」


赤い顔をした雄大が見えた。
彼はエアコンの電源をいれながらそう告げる。



寒いから赤い、ということにしておきますよ。



「鍋とか。野菜あるなら」


適当にぶちこんどきゃ完成するでしょ、あれ。

楽だし。




「あー、いいね」


賛成してくれた雄大はガスコンロと土鍋を持ってくる。



野菜を食べやすいように切って煮込んでいく。



「ただの野菜煮」

「だね」


ふふ、と楽しそうに笑う。



「豆腐とかないの、油揚げとか」

「さんまの味噌煮缶詰」

「それは駄目でしょ!」



ボリューミーなものっていったってそれはいけないだろ。

ぐっじゃぐじゃになってしまう。



「手羽先?」

「よし、投入だ」


いいダシ取れないかなこれで。



結局野菜煮という名の鍋を食す。


でも体ぽかぽかになった。





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