1-1:おいでませ逢坂寮![ 1/16 ]
寮の話をした1週間後、私は綾子さんの言っていた「逢坂高校」に来た。
授業を受けるのは明日かららしいのだけれど、寮に住むのは今日からということで寮の人たちを紹介してくれるらしい。
「ちょっと待ってな。あと少しで担任がくるから」
綾子さんに言われ、私は静かに待った。
担任か……どんな人だろう?
しばらく待つと、授業の終わりを告げるチャイムが響く。以前通っていた高校と少しだけ違う、ワントーン低いチャイムに違和感を覚えた。
「失礼しまーす!」
元気よく大きな声でドアを開いたのは、髪の毛がふわふわとしている男の人。
その人は制服は着ていないけれど、どうにも大人には見えない。生徒さん……?
「華。この阿呆そうなのが担任」
「ねぇ、まともな紹介してくれる!?校長!」
「……若いですね、学生さんだと思いました」
予想していた真面目でお堅い先生が来るかというイメージは一瞬で崩れさった。
ヘラリと和やかに笑い、愛想が良い若い人。
「俺、そんなに若い?」
先生は茶化すように笑って頭を掻いた。
照れているわけでもなく、言われるのは慣れてますと言わんばかりに。
「童顔、話を聞きな」
「校長酷い!」
……綾子さんはひとつ咳払いをしてふわふわの人を見る。
「平川。この子が加賀華」
「あぁ、この子が」
綾子さんの言葉に彼は私の方に視線を向ける。
ふわふわの人、もとい平川先生がにこりと笑った。
「俺は寮の監督兼明日から君の担任になる平川賢介。よろしくね」