死んじゃうのかぁ、なんて久住は心の中で呟いた。
全身は痛くて、冷たくて、重たい。
意識も途切れ途切れだ。
誰かの手が久住の手に触れていることは彼も気がついていた。
久住より小さくて、温かい手。
あぁ、珠希が迎えに来てくれたのかな、なんて。
ないか。
ぶつぶつと、嗚咽混じりの言葉が聞こえる。
はっきりと聞き取れないけど、謝罪の言葉に思えた。
ねぇ、
泣かないで。
謝んなくてもいいよ。
……真穂ちゃん。
不器用な、歌が聞こえる。
彼女の歌は、俺の歌だった。
不器用で、下手くそで。
だけど、俺が歌うよりもずっとずっと心に響くと思う。
声なんかもうでなくて。
ありがとう、なんて伝えられない。
下手くそな鎮魂歌はワンフレーズを繰り返す。
あなたを忘れない。
そのフレーズだけが繰り返される。
奴隷とか言われても。
好きな子を殺されても。
ゴミ箱部隊とか、言われてもさ。
ここまで自分のために泣いてくれる人がいたのなら。
俺の人生も、捨てたもんじゃなかったのかもしれないね。
歌を聞きながら、足掻きもせずに、久住はゆっくりと意識を手放した。
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snowwhite requiem
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