数年経って、木下とかいう金持ちに買われた。
悪趣味だなぁ、とか思ったけど戦力になるという理由だったっけ?
あまり生活は変わらない。
昼に人を殺して。
夜から朝にかけて抱かれる。
嫌悪はとっくにどっかに行ったけど、強いていうなら下手くそ。
以前は少しくらいは気持ちよく感じることもあったのに、これっぽっちも気持ちくないし痛いだけだし。
暴力ふるってきて痛いし。
跡残すのやめてほしいし。
どうでもいいけど。
なんとか絞り出す喘ぎ声はどっから聞いてもわざとらしい。
そいつは満足したら部屋に戻っているのだろうか。
俺が意識を飛ばして、目覚めたころにはいないからそうなんだろう。
意識を夢の世界に移せば、少女が俺に掴みかかってくる。
十数年前に死んだはずの、
殺したはずの少女は俺と同じくらい成長した姿で俺の前に毎回毎回現れる。
『刹那、どうして私を殺したの?』
「仕方ない。そういう世界だったんだから」
『刹那のこと、大切だったのに、特別だったのに。私だけだったの?』
「俺だって特別に思ってた。でも、殺さなきゃいけなかった。珠希だってわかってるだろ」
彼女は憎悪を俺に向けて首を締めてくる。
毎回、毎回。
夢に出てきては首を締めてくる。
どこまで引きずるのだろうか。
殺したことを後悔しているのだろうか。
息苦しいなか、可哀想な彼女をぼうっと見つめる。
自分だってそうしてきたろ、珠希。
自分が飯をやったやつだって殺したろ、それで笑っていたろ。
額に冷たさが襲ってきて、彼女は俺の前から消えた。
というより、俺自身が、覚醒していた。
目を開くと、そこには見知らぬ男が気まずい顔をして俺を見ていた。
誰だと問うと、バディであると答える。
はぁ、バディ、何それ。
それはどうやらお偉いさんが提案した制度らしかった。
そいつは、槇田春樹は。
全体においててんで駄目で、スナイパーの腕だけは何故かトップレベルだった。
こいつがあの場所にいたら即死だな、即死。
愛情を与えられて育ってきたのだろう。
そんな馬鹿が現れて、俺の周りに首を突っ込んでくる。
あぁもう、バディだかなんだか知らないがうっとおしいなぁ。
やめてほしいわ。
木下が春樹に殴られただとかいって俺に暴力ふるってくるし。
ベッドじゃなくて床で行為に及ぶし。
痛いって。
体がガタガタなのにまた、春樹に何かされたらしい木下が水浸しで俺の前に現れた。
ほらほらほら。
また殴られる。
ドアが勢いよく開いた先には春樹がいて。
そいつは木下を殺した。
その上で、
「じゃあ、刹那と一緒だね」
笑っていた。
その残酷で無垢な笑顔は、珠希のようで。
思わず顔を歪ませる。
──どうやら俺の周りには
ロクな人間は集まらないらしい。
残酷な笑みを浮かべる君は
前へ***次へ
[しおりを挟む]