話を聞いた限りでは、殺戮兵器の検査をしてほしいとのことだった。

最終的に解体してしまうのなら、最初からすればいいものを。
幾つかの道具を持って捕虜をおしこめる地下室へと睦月は歩いていく。

埃くさい地下。兵士の何人かしか知らないであろう捕虜収容所。
少しくらい掃除したらどうだ。


空洞の道に革靴の音は響く。

さてさて、小野寺と渡り合った女とはどんなゴリラなのか。



一番奥の部屋に、その女はいた。

想像していたよりも遥かにほそっこく、華奢だ。
黒髪がきしんでいるのか、髪に輝きはない。

女は無邪気そうな顔でにこりと笑う。
凶暴なのかと思考していた睦月は肩の力を抜いた。


随分と大人しそうな女だ。
油断させる作戦だろうか。

まぁ、手錠で拘束されているし殺すことはできないだろう。


檻ごしに彼女と目を合わせる。
睦月は彼女の全身を一瞥した。

見えるところでもわかるほどの手術痕。
やはり殺戮兵器の能力は天性的なものではなく人工的なものらしい。


「はじめまして」


女の声に、睦月はびくりと驚く。まさかあちらから話しかけてくるとは。

「……あぁ、はじめまして」
「あなたは誰?」

妙に馴れ馴れしい。
自分が捕虜であることを理解しているのだろうか?

「俺は医者だよ、ちょこっと体を見させてもらいたいんだが、構わないか?」
「どうして?」
「お偉いさんがあんたの強さの秘訣を探りたいんだと」

牢の鍵を開けて彼女に近づく。
彼女は気にせずに首を傾けた。

彼女の身に着けるぼろぼろの布の袖をまくる。
肘関節前方に大量の注射痕。

他にも大量の縫い痕。


「あんた、男と戦りあったろ。傷は?」
「さぁ、消えたわ」


消えた。
人間にはあり得ない回復能力も持ち合わせているようだ。

服を脱がせる。
……別に女の裸体は見飽きるほど見てきたのでたいした意識もしない。
ま、死体のだけど。


あちこちに手術跡のような傷が目立つ。

確認してから服を着せて、採血を行った。


「オーケー。明日からちょくちょく体調確認させていただくんで、よろしく」

しばらくの間深く関わるのは睦月で、彼女に顔を覚えてもらおうと考える。


「後で飯も持ってこさせるよ。何か不具合があれば俺に言ってくれ」


返事も聞かずに埃っぽい地下牢を抜け出した。



対面


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