──どうして助けたの?
春樹にそう問われた気がする。
エリカがそう聞いてきた気がする。
「救いたかった」のだと、答えた気がする。
正直に言ってしまえば、気まぐれだったのかもしれない。
誰でも良かった。
自分より可哀想な人間を見つけて、安心して。
可哀想な自分を隠したかったのかもしれない。
ただ、殺すだけじゃない。
救うことができる。
まだ俺は“人間”なんだって。
思いたかった。
結局、少女を怖がらせて、苦しめて。
救えたと言えるか?
いいや、言えないね。
怯えるように俺を見る少女はきっと両親を殺した犯人に気がついたのだろう。
その犯人と共に日々を過ごしていたことに嫌悪したのだろう。
俺が“人間”でいれるために利用された気持ちはどうなんだ?
自分のエゴのために少女を利用して、結局救えやしない。
春樹はさ、俺を“人間”だと言った。
だけどやはりそうじゃないみたいだ。
俺は救うことも守ることもできない。
ただの“道具”なんだよ。
人を殺し、時に利用される“道具”でしかいられない。
春樹はそれをよくわかってんだろ、知ってんだろ。
だから時々俺を憐れむような目で見てくるんだろ。
救えないなら、いっそのこと。
少女を楽に逝かせてあげよう。
両親の元へ。
だって、もう戻れないだろ。
俺のことを恨むことで生きていくしかできないんだろ。
そんなの可哀想じゃないか。
最低だな、最初から最後まで。
ごめん、ごめんな。
エリカ。
──さよなら。
嗤う悪魔
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