すぐに服を着替える。


周りの色に馴染み、かつ、動きやすい服。


腰回りにナイフを装着する。





使い慣れたショットガンとライトマシンガンを手にとって、部屋を出る。



首から提げてある自分の名前が刻まれたドッグタグが、揺れた。


それはもう慣れて、不快にすら感じない。










但馬拠点の周辺にある街を出ると、相変わらず静かだった。


「つうかさ、こうやってちまちま戦ってても意味ねぇよなー、敵陣突っ込んでボス脅せばいくね?」

「……やれるならやってみろ」



冗談だよ、と春樹が呆れる。




敵の多い状態で乗り込んでも返り討ちに合うだけだ。

だから減らして、乗り込めるようにするのだろう。




対立も長いから、双方の戦力もだいぶ減ったろう。



そろそろ、終わるのかもしれないな抗争が。



どちらが勝つかなんて、わからないけれど。






近付いてきたのは、エリカを見つけた街。



2つの派閥の拠点から中心にあって、戦場となってしまった、名前も失った街だ。




変に静かで、銃声だけが時折響いた。






「おい、ちょい!俺から見える位置で動けよ!」


春樹が歩き出した俺を見て叫ぶ。

そいつの手にはスナイパーライフル。




俺は近距離。

春樹は遠距離でサポート。



いつもこんな感じだ。





「お前からどこが見えてるか知らないな」

「おまえ遠くに行き過ぎなんだよ!」



話をできるように通信機を装着して街へ降りる。




誰もいない。



……静かだな。


ドアが壊れた建物の中に入ると、当然のごとく住人はいない。




住人だったであろう腐った何かは3つほど転がっているけれど。



耐えられないほどの異臭に首に巻いてある薄い布のマフラーを鼻あたりまで持っていった。


ぎし、と階段が不気味な音を立てる。


できるだけ音を立てないように、あがっていく。




上の部屋には、敵のスナイパー。




馬鹿だな。


油断してるのか。

外にいる人間を狙ってるから背中ががら空きだ。




息を殺してナイフを手に取る。



一気に、間合いを詰めて。



相手が気付いたとほぼ同時に斬りつけた。




相手に隙を与えず、頭にショットガンで弾を打ち込んでやった。



それはもう、動かない。





「……残念だな」

『ゲスいな。弾一発で死んだろ』

「なんだ、おまえの所から見えてるか……オーバーキルだったか、弾の無駄だったな」

『えぇ、スコープ越しにばっちりと。弾!?そっちかよ』




春樹はせこい奴だからある程度安全な場所で狙ってるんだろう。


他の敵スナイパーにもバレる位置かもしれない。

急いでこの場所を後にしよう。





次は音を気にせず階段を駆け降りた。




どこに行けばいいか。


建物に隠れながらま耳を済ませる。





音がどこで鳴っているか。



『刹那、お前の右500m先くらいで苦戦中のやつ、サポート』


「了解」




サポートというか突っ込むけどいつも。



右側に走っていけば、音は段々近付いてくる。


必死に隠れている、こちら側の人間が目に映った。



多勢に無勢か。
相手は多いな。




そいつは血みどろで、全身怪我をしている。



新人なのか、慣れていないのか、表情も苦しそうだ。




「……おい、もう1人は」


「小野寺さん……」



少しだけ、安心した表情を見せた後に暗くなり1枚のドッグタグを見せる。




おそらく、相方の名前が刻まれたものだ。


……死んだのか。





「その傷じゃもう無理だ。帰れ……おい、春樹」

『今そっち行くわ!』

「変なサングラス男が来るから安全な所で待機してろ」

「は、はい」

『変なって何!』



騒ぐなって。



壁越しに相手を見る。





残っているのは何人だ。

回り込んできてもおかしくないな。




ぱぁんと音が響く。



春樹が回り込んできた奴を撃ったのか。




「刹那!」

「こいつ家まで連れてけ」



相手に意識を向けたまま言い放つ。


「1人で大丈夫か?」


いいから早く行けよ。



「……片付けておく」

「無理はすんなよ」

「しない」



春樹は言葉を吐き出しながら怪我をした奴を背負って走りだした。





無理はしないさ。


無茶はするけどな。

なんて。






見た感じ相手は5人。
大丈夫だな、いける。




持っていた閃光弾を投げて相手の目くらましをする。





大人数の時は一発一発威力があっても速度が遅いショットガンよりも、速度の速いライトマシンガンの方が有効だろう。



即座に銃を持ち替える。


相手が動揺している間に遠くの奴から、撃っていく。





間合いを詰めながら確実に仕留める。



近くにいる奴に、ナイフで思い切り斬りつけた。





次に近い奴、最後の的の頭に弾丸をぶち込む。




あまり秀でた奴もいなかった。


雑魚の集まりか。




味方の方は、慣れてないから躊躇ったとかそんな感じか。

そうでないならこの道から離れた方が良いと思うが。




「塵は積もって山になっても塵だよな」

『もう終わったのかよ!?』

「あぁ」



ヘッドショットはいいな、一発で仕留められて。




倒れてるそいつらの首もとからドッグタグを頂戴していく。

功績あげたうんぬんなんて、こんくらいしか証明する方法ないしな。



かの朝鮮出兵は耳を剥ぎ取って示したんだったか?




臭そうだし俺はやりたくない。


党首でも嫌がるわ。




『おい進まないで待ってろよ、今戻るから』


「早くしろ」




手にある5つのドッグタグをポケットに突っ込んだ。


あぁ、そうだ。
春樹がやった分も回収しておかないと。




春樹が撃っていた場所に移動する。


あぁ、あったこれか。




しかしドッグタグはもう、1枚しかなかった。


取り外し出来る方はもう回収されている。

さっきの奴らは、持ってなかったと思うが。




まだ、いるのか。



集中して、息を殺した。




まだ何人かいる、しかも、俺の場所はバレてるようだ。

殺気がこちらに向けられている。




「春樹、あとどんくらいだ」

『急いで5分!』



……遅いな。





仕方がない。
春樹の文句がうるさそうだが、やるか。


他の仲間はどこにいるんだ。

まさか、やられたのか。



広い街だから散らばっても仕方がないのか。

相手さんの団体行動が正しいと思うが。




まぁ、俺はしたくないけれど。






1歩を力強く踏み込んだ。


橋場派がいるであろう場所にグレネード……小さな爆弾を投げつける。




ライトマシンガンの残りの弾を撃って再装填した。





撃っていても相手は陰に隠れてて中々当たらないか。


このまま続けていれば、人数の少ないこちらが不利になる。
春樹が来ても状況は変わらないだろう。




閃光弾をまた投げて一気に詰め寄る。


目がくらんだまま敵が銃弾を放っているため、銃弾の飛ぶ方向はぶれまくっている。




さくさくと処理していくが数が多い。



目が慣れた人間がこちらに狙いを定めてくる。




何発か当たっているけど、まぁ致命傷にならないからいい。



こちらも応戦するように撃ち返す。





『おい!進むなっつったろ!』


「いや、囲まれた」




春樹の声は息が上がっていた。

走っているのか。





最後であろう奴が間近で俺にハンドガンで撃ち込む。




慌てたのか、心臓からだいぶ離れたところに当たったけれど。



「そこは肩だ」



ライトマシンガンを相手の額に当てて、引き金を引いた。



血がこちらに飛び散ってくる。




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