【夢が醒めれば】で喉にキス 船に戻った二人のその後。やっぱりまだリンちゃんマルコさんを許しきれてない頃。 というかとっくに許しちゃってるけどでも…、という乙女心で揺れてる頃。
「っ、マル、コ」
思わず引きつった声が出てしまったそこからマルコの気配が離れていくのを感じる。
ツキリ、と痛む喉元に無意識に触れそうになった手はマルコに取られてしまった。
「な、なに…」 「……」
多分、ここは空き部屋になっているという船室、だと思う。
私の暗いばかりの視界では突然腕を引かれて引っ張り込まれた場所がどこであるのか正確には解らない。
ただ、少しばかり乱暴に閉められた扉の音から察するにどこかの部屋で。とすれば可能性があるのは近くを歩いていたはずの空き部屋だと、思う。
正面の暗闇から突き刺さる気配だけの視線に思わず身体が震えた。
暫くマルコを避けていた私に、どこか苛立ちを含んだ視線は居た堪れない。
「お前が俺を避ける理由は解るがよい」 「……だ、て…」 「ハナっから俺が悪ぃ。簡単に許されるとは思っちゃいねェよい。無理矢理連れてきた様なモンだしねい」 「……」 「だが…、なァ、リン。俺はお前が他の野郎のモンになるのを黙って見ていられるほど出来ちゃいねェんだよい」 「なんで、知って…」
視力を失った足手纏いにしかならない様な私を、家族はもう一度受け入れてくれた。
その中にはもちろん私が船を出ていた時間に家族の仲間入りをした人達も、いて。
彼らも初めは私を訝しげに見てはいたのだけれど。
『…リンさん。俺…アンタのこと欲しいんですけど』
彼もまたそんな中の一人であった。
突然の言葉に思わずぽかん、としてしまった私に畳み掛ける様にして、すぐに返事はしなくていい。ゆっくりこちらを向いてくれればいいなんて言うものだから、私は思わず頷いてしまったのだけれど。
「…許されるまで贖罪を積むしかねェと思っちゃいたが。その前に他所に行かれんのはごめんだ」 「……マルコは…いつも勝手だよ」 「そうだねい。解っちゃいるが…なぁ、リン」 「…っ、」
俺はお前をもう離してなんてやれねェ。
噛み締める様にそう言った唇が再び喉元に落とされる。
欲しいと思っていたマルコの欲に、私は…。
(許してしまいそうになる…)
本当は、手を伸ばしてしまいたい。
*** 噛み付いちゃったよマルコさん。
喉元にキスは欲求。 このお話のマルコさんどんどん最低になっていくんですがどうしよう。 我慢しなよアンタが悪いんだよ、と言いたくなりました。 まあ、結局この後暫くしたらもうリンちゃん許しちゃうと思うんだけど。
2016/05/23 20:44
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