【友達以上恋人未満】で背中と頬と唇にキス 完結した後暫くしてからの二人。のつもり。
「ごめん、お腹減った?」 「ん、いや。美味そうな匂いがしたからねい」 「そう?もうすぐ出来るから…」
ふらり、とキッチンへとやってきたマルコを少しだけ振り返ると、キッチンの入り口に少しばかり体を預けてこちらを見ていた。
「見られてるとなんだかやり辛いんだけど…」
外されない自然に思わず苦笑して言えば、マルコは何も応えないまま緩く笑う。
それに何を言ってもダメだな、と。そんな風に諦めて私はコンロへと向か直して。
誤解や、見栄があった。
臆病でもあった。
どうしよもない長い時間を経て、すれ違うばかりだった私達がきちんと向き直ったのは少し前のこと。
手に入らない、近くない将来消えてしまう。それでもいいから一時でも傍にいたくて、求めてもらいたかった。
そう思っていたのに「お前だけがいい」とマルコはそう言ってくれて。
そうして今はとても。とても…信じられないくらいに大事にしてもらっている。
そう認めないのは逆に失礼だと思うくらいに。
「、マルコ?」 「美味そうだねい」 「……もう」
ハッとした時には後ろから抱き込む腕が私のお腹の下で組まれていた。
肩越しから覗き込む手元では鍋の中でグツグツと煮物がいい具合に蕩けている。
あと少しだけ煮込んだら、出来上がり。
「リビングで待ってて、」 「ン…」 「……どうしたの?」
ス、と少しだけ背中の温度が離れていったと思えば、そこに触れた感触にぴくり、と僅かに肩が上がってしまった。
振り返ることなんて到底出来ないままの私に、背後でマルコの楽し気に喉の奥で笑った声が聞こえる。
「いや、お前がこの家で飯作ってくれてんのがな。いいなと思っただけだよい」
そう言うマルコだけど。ねぇ…。
「…私が知らないって思った?」 「クク…。じゃあ、お前はどう思ってる?」 「そうね…」
一度はもう離れようと思ったけれど、きっとそんなことはやっぱり出来なかったんじゃないかなって今では思うの。
ずっと、貴方を親しく愛しい。
首だけで振り返りながらマルコの頬にそっとそんな気持ちを添えれば、カチリ、とコンロの火が止められた。
くるり、と体ごとマルコの方へと向けらるのに、私は慌てて鍋に添えていた手を離す。
「どうせならこっちがいいねい」 「…、」
悪戯な目をしたマルコが私の顔に添えた手の指先で触れた唇が、思わず。
「…マル、」
名前を呼ぶ前に塞がれた。
*** 背中にキスは『確認』。 傍にいてくれる自分の彼女ということを確認したい気持ちによるキス。とかなんとか。
唇にキスは言わずもがな。
2016/05/23 19:38
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