(銀妙)


依頼の為三人が遠出をして五日が経った。そんなことを頭で考えながら三時のおやつにダッツを食べる。しばらく会えないからと、出掛けていく前に彼が買ってくれたものだ。金欠なのでこの一個を買うのが精一杯だったのだろう。冷たく甘い大好きなそれで、いつも幸せに満たされた。
なのに今日という日はため息ばかりで。
今日だけでない、ここ最近はずっと気分は晴れないまま。スプーンで掬って口へ運ぶ動作を繰り返すのみ。いつものように甘いのに、何処か虚しさを抱えている自分。

不意に顔を横に向けてみた。誰もいない。
当たり前のことなのだけれど。
(ストーカーでもいようものなら殴りかかっていただろう)
そうして気づく。



ああきっと、居てくれたから満たされてたのね。澄んだ空を見上げて想う。大好きなこれを食べるこの時間、いつも一人じゃなかったと。居てくれたじゃない、隣。家賃がどうのとか、仕事がどうのとか、ストーカーがどうのとか。そんな話してたじゃない。(最後の例はつまらないものだけど)
日常の会話に胸が弾んで、アイスも一層美味しくなって。そうして自然に笑顔ができた。そんな午後の小さな幸せがあった。




黙々と食べていくうちに空になったカップを置いて、洗濯物を入れようと庭へ出た。

いらない心配も増すばかりで、虚ろな心がまとわりついて。
全く、いつ帰ってくるのかしら。


「…早く、帰ってこないかしら」

「今帰ってきたんだけど」


耳が聞き慣れたそれに反応して反射的に振り向く。ようと、手を挙げ彼は近づいてくる。
突然で、驚いて、でも。
なかなか久しぶりに見る彼は、いつもと同じ彼だった。


「寂しかったか?」


聞かないでよ、分かってるでしょう。

手をぐっと握りしめ後ろへ。隠すように。


「…寂しく、ないわ。大丈夫よ」


大丈夫。
確かめるようにもう一度言おうとした。けれど彼の腕に捕まってしまった。懐かしい体温に触れれば熱が込み上げる。そっと目を伏せ身体を傾けた。


何も言わないで、優しく抱き締めてくれる彼の腕がすき。
悔しいけど、だって大好きなんだもの。


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