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お礼文は現パロ文仙『君に、触れる01』(仙蔵・伊作♀)です。(君に〜シリーズ)









「御見合いって…ちょっとお母様!」

「そんな恐い顔をしないで。綺麗な顔が台無しよ?」

講義が終わる頃、珍しく母からメールが有ったからおかしいとは思って居た。
夕飯までの少しの時間、車で迎えに来た母(勿論運転手付きだが)にホテルの喫茶室に連れて来られたらやっぱりそんな話しだったのか。

「だって…私はまだ学生だし、大体御見合いなんてするつもりはー」

「うんうん、お母様も分かってるわよ。唯ね?お父様のご事情も有るみたいだし、ほら!会ってお食事だけでもして来たら?ね?」

…この人、こうなると絶対に引き下がらないからな。
何が楽しくて初対面の男と食事なんてしなきゃならんのだ。
ああ、本当っ、面倒臭い!
確かに母は何も知らない、知らないんだけど…。

「…それ、いつ?」

「やったぁ!お父様喜ぶわ。あのね…24日」

「えっ、イブ!?」

「大丈夫、大丈夫。このホテルだから仙蔵慣れてるでしょう?はい、決まり!」

…頭が痛い。
見合いの事はもう諦めよう。
せいぜい二時間、我慢して食事だけでも楽しめば良い。
相手はきっと父の経営する製薬会社関係の男だろう。
インテリでいけ好かない奴に違いない。
考えれば確かに気分は悪いが、頭が痛いのはそのせいでは無くてー。






『は?イブに見合い?』

その夜電話で打ち明けると予想通りの反応が返って来た。

「…ああ、父の会社関係らしい。今回は母が絡んでるもんだから断り切れなかった」

『…ふうん』

気まずい沈黙が続く。
そもそも何が言いたいのか。
反対に何と言って欲しいのか。
奴は何でも話せる所謂幼馴染み、恋人だと胸を張って言える事実は一つも無い。
出会ってからの20年間、お互い気持ちを確かめた事すら無いのだから。
しかし例え口にはしなくても暗黙の了解と感じて居るのは自分だけなのだろうか。
急に胸が締め付けられて唇を噛んだ。
イブに一緒に居たいなんて自分に言える筈無い。

「…と言う訳だ。じゃあ切るぞ」

耳元から離れた携帯からあいつの声が漏れた。

『仙蔵…今から家に来ないか?』

「今から、って…もう夜だしー」

実家に住んで居るが出掛けられない訳じゃない。
家族ぐるみの付き合いであるあいつも良く知って居る。
それはつまり、泊まりに来いって事か?

「…行く」

心の何処かで期待して居たとは口が裂けても言えないが、自然と零れる笑みは抑えられない。
荷物も殆ど持たないまま急いで家を出た。
途中まで迎えに行くと言うあいつの申し出を断ってタクシーを拾う。
…顔を見たら上手く話せるだろうか?
この口は自分の気持ちを上手く紡いでくれるだろうか?
そんな事を考えている内にあっという間あいつのアパートに着いた。
エレベーターの無い古びたアパート。
裕福な実家からの援助を断って自力で生活しているせいだ。
口では汚いや引っ越せと文句を言っているが、内心はそんな所も好きで堪らない。
階段を駆け上がり家の前に着いて深呼吸をした。
インターホンを押してすぐ出て来たあいつを見て浮かんだ笑顔は、すぐに消える事になった。

「あ、仙蔵来た♪」

「…コンバンワ」

「早かったな、タクシーか?こいつらが近くに居るっつーから家で呑む事にしたんだ。入れよ」

「…みたいだー」

「あ?何だ?」

俯いたまま声を絞り出した。
…絶対に、泣くもんか。

「…馬鹿みたいだと言ったんだ。急いで飛び出して、私はー」

「…」

何も言わないあいつを見上げると不覚にも一筋涙が頬を伝った。

「…もう良い、じゃあな」

言い残して再び階段を駆け下りた。






(次ページ続く)






駄文で失礼致しました(*_*)有り難う御座いました☆




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