偶然





あの日、優葉は、いつまでも君にすがる僕に対して、決して首を立てに振ることはなかった。

僕がいつまでもあきらめ切れなかったのは、時折ゆれる瞳があったからだった。

厳しく理性を放つ君の瞳を見ては、僕は悲しみに包まれたが、僕を受け入れるようなやさしい瞳が現れると、僕はまた君にすがりついてしまう。




今となれば優葉の気持ちは痛いほど良く分かる。



でもこのときの僕はそんな大人にはなれなかった。


僕は、あの夜以降も優葉に連絡をし続けたんだ。

つながらない電話も返信の来ないメールにも苛立ちを覚えたり、どうしようも出来ないこの気持ちを募らせた。

優葉からの返信が来ることはなかった。




でも、一ヶ月たっても、三ヶ月たっても、半年たってもアドレスも番号も変わりはしなかった。


僕はただ、届いているのかもわからないメールを優葉に送り続けていた。


ただ、今日一日の出来事。

そんな些細なメールを。



そのうち、僕の心の中の優葉も時に任せて薄れていって、きっとメールも間隔があいて、そして僕は優葉のいない日常を取り戻すのだろう。




そう、僕らは本当はここで終わりを迎えているはずだった。




あんなことがなければきっと、忘れていくはずだった。




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