Novel
奇跡の軌跡
『奇跡の軌跡』
うーん、と大きく毛伸びをする。その瞬間に、どっと今までの疲れが押し寄せてくる。
『やっとおわったぁ……』
もう夏の終わりだというのに、専属の教師に嫌味ったらしく大量の課題が出されたのだ。
その家庭教師は外見を気にするタイプの人間で、有哉が問題を解いている間、ずっと鏡とにらみ合っている。
その自慢の顔をぶん殴ってやろうかと思ったが、ここで手をあげては、こんな課題を自分はやり遂げることができないと意思表示してしまうことだった。
そして有哉は、寝る間を割いて課題にとりかかったのだ。
七日目の今日、その課題をやり遂げたのだ。
誰も見ていないし、大きく毛伸びをしたところで、誰に咎められることもなかった。
これを父が見れば、どんなお叱りが待っているやら。
そんな言い訳を、苦笑しながら考えていた。
その時。