Novel



「よっ!俺はエリオットマーチだ!よろしくな。ニンジンケーキ食うか?」



そういうエリオットは、目をきらきら輝かせてオレンジ色の皿を渡してくる。



『いや!!遠慮しておくよ。君だっていつも仕事で疲れているだろう?ブラッドの為だとはいえ、休憩も必要だ。
遠慮なく食べてくれ!』



(あー・・・ニンジンを押し付けんな。クソウサギ)



「あんた・・・いい奴だな!ありがとうな」



『あは・・・はは』



あからさまに顔を引きつっているであろう僕に気づかず、エリオットはニンジンケーキに顔をうずめる。



(・・・・・・)



何かもの足りない。



そう思って周囲を見渡す。



「どうしたんだ?リナリー」



僕の視線に気づいたのか、ブラッドがたずねてきた。



『ディーとダムがいないなーと思って』



エリオットのにんじん劇に、いつも欠かさず突っ込みをいれる双子が、今日はいないのだ。



どうしたものか、とたずねてみた。



「今頃、猫のおちびさんとじゃれあっているんじゃないか?子供は元気だな。それより・・・」



(それより?)



っ!!



ブラッドが、いつの間にか後ろに移動していた。



(気配がない!?)



「リナリー。君の心は、此処に居ない者にとらわれている。もてなす側の主としては、おもしろくない」



そう言って、僕の髪に口付けをする。



『ちょっとっ・・・』



何をやっているんだこの男は。



その見た目では女に飢えているわけではないだろうに。



「少し体温が高いな。そろそろ眠気が襲ってくる。部屋に案内しよう」



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『あのー・・・』



「なんだ?」



『なんだ?じゃないだろう・・・。なぜ君の部屋なんだ。そしてなぜ添い寝をする!?』



この部屋に来る前、ぴらっぴらのネグリジェに着せ替えられた。



そのまま客室に案内されるのかとおもいきや、ブラッド自ら部屋に招きいれた。



(気に入られたのはいいけれど・・・)



近い。



何よりも問題なのは、二人の距離が、吐息を感じるほど近いということにある。



「いいから眠りなさい。おやすみ。リナリー」



なんか誤魔化された気がハンパない。



もしかして、と考える。



先ほど、茶会の席で僕に近づいてきたのは、僕の体調を気にしてのことだろうか?



(そんなはずはない)



そう思わなければ、この男の優しさに飲まれてしまう。



残酷ゆえ引き立つ優しさに、触れてしまう前に。



そのまま僕は、意識を手放した。



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〜あとがき〜

やっと土台というか出会いというか・・・
次回は、ブラッドさんのベッドで目覚めます。
・・・目覚めます!!(なんで二回いうんだ)
一度でいいから目覚めたい!

〜siki〜


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