Novel
1 日常の終わり

【1 NOTE 】



不定期連載【モノクローム アクト】



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この物語は、孤独な少女 


リナリー=ストラブラッドが、魔女という


存在に改名する以前の、もうひとつの物語。




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夢をみた気がする。


それは、とてもとても長い夢。


いとおしい人に囲まれて終わる結末。


よく覚えてはいないけど、彼女はいつも血まみれだった。


それは、彼女のモノでなく、他人の返り血だ。


僕の目に、彼女はとても強く焦がれる存在だった。


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『ん……』


重い瞼をこする。


いつの間に寝てしまったのだろう。


自宅の庭で、魔力痕を見つけて…それから……?


「起きたのか。お嬢さん」


自分以外の声へ振り向く。


起きた時点で気配にはきづいていたので、驚きは少ない。


『現状をみたところ、寝心地はさぞよかったんだろうね』


僕に声をかけた男は、その美しい顔に不釣合いな帽子をかぶっている。


口調や物腰、仕草を観察したところ、それなり礼儀のある人みたいだ。


「そのとおりだ。はぁ……紅茶が飲みたい」


紅茶?


(このひとは紅茶がすきなのか?)


だとしたら気が合いそうだ。


僕自身、部屋の壁一面に紅茶の缶や本、資料を並べるほどの紅茶好きだ。


「ちょっとちょっと。この状況で紅茶の心配?気持ちはわからなくないけどさ」


『は?』


全体的にピンクを纏う青年に苛立ちを覚えた。


『なんで耳生えてんの』


なにか変なことを言っただろうか。


当の本人は険しい表情をしていて、帽子の人はポーカーフェイス。


僕の死角にいた白い…兎は首を立てに振っている。


「ざまぁねぇ!初対面でアリスにもピンクの人ってよばれてたもんなぁ!!」


「うっさいな。おっさんはだまってなよ」


「おっさん!?あのな。おれはま・・・『あんたたちも状況わかってないじゃんか』


鋭く冷たい視線をプレゼントすると、二人は言葉を失う。


「「すいません・・・」」


『あと、声抑えて密かに笑うのやめてもらえません?』


何が面白いのかはわからないが、帽子の人はクククと笑い続けている。


「すまないね。きみは…余所者だろう?」


その声に、他の奴らが反応する。


「「「余所者!?」」」


なんだわかっていたのか。


てっきりまともな奴が居ないので、わからないと踏んでいたのに。


「あんたまじで・・・」


突然ピンクのひとが、不自然に言葉を切る。


「ん・・・ボリス?」


ちょうど僕の方によりかかって寝ていた(ていうか気絶させられていた)女の子が目をさました。


「アリス!!めがさめたんだ!よかった」


ボリスの言葉と目の前の状況に目をまるくする女の子。


『今、僕たちは閉じ込められているんだ。僕もさっきめざめたところだよ』


そう。めざめた場所は密室の客室。


窓は無く、ドアには南京錠や鎖で出口が閉じられている。


その上、両手を手錠で拘束されている。


足は動くが、身動きがとりづらい。


「そうなの・・・。また貴方の仕業かしら。ブラッド?」


アリスは、冷静に状況を判断して話始める。


先ほどまで騒いでいた、どこかの大人とは違うようだ。


「そう怒らないでくれ。ちなみに私の仕業ではない」


いかにも返答にめんどくさそうだ。


目を細くさせてけだるげに話す。


「じゃあ冷静に考えて、ここからどうやってでるのよ」


アリスの判断は的確だ。


不要な質問や呟きを避け、自分の目的へしっかりと話を運ぶ。


「それは私にはどうにもできないな。そこのお嬢さんには、ここから出る算段があるそうだがな」


(なっ!!)


自分の失態に背をむけるブラッド。


その謎めいた発言に、アリスは僕へと視線を移す。


「えーと・・・」


いくらしっかりした子でも、この状況で気軽に話しかけることは安易ではないようだ。


『僕の名前はリナリー=ストラブラッド。本名ではないけど気にしないで』


「え、ええ。それで、算段があるの?」


アリスの声は、少し緊張していた。


このままここから出られなければ、飢え死にか・・・敵襲がくるか。


(まぁこの子の感覚は正常だな)


『しょうがない…』


あまり人前では、魔法を使いたくなかった。


僕は、魔法が・・・


_嫌いだ。


自分の足へと手を滑らせる。


指が、ナイフホルダーに触れたとき呪文を唱える。


『ラヴィノーツ アクト』


その瞬間、僕を囲むように魔法陣が現れる。


『_スペル。ソードナレーションソード』


僕の言霊に反応して、何も無い天井から光の刃がふりおちる。


光の刃で、アリスたちの手錠が崩れ、はずれる。


『スペル。_攻撃』


息ついたその直後、ボリスがもたれかかっていた壁が、瓦礫へと姿を変える。


「にゃっ〜!?」



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〜あとがき〜

新不定期連載の開始です。
ラヴィノーツの、もう一つの世界的な。
次回もおたのしみに!

〜siki〜
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