▼ 1 clock
【1 NOTE 】
・・・・・・誰?
誰かが僕を呼んでいる。
その声は、僕にとってなんだか懐かしい声に聞こえた。
きっとそれは、声の主にとっても同じ感情だと強く確信づいた。
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『はぁ……』
ため息をつきながら自室に入る。
目に入ったのは窓から覗くきれいな月。
だいすきな夜の、静かな一人の時間。
(ずっと続けばいいのに)
そう思うことも許されない世界なのか。
思考回路がぐるぐるまわる。
『さて……明日も学校だし早く寝なきゃ』
そう、僕、咲夜=ストラブラッドは高校生2年生。
学校は嫌いだ。
僕の母方の叔母は、異国の血が混ざっており、
ストラブラッドという苗字である。
その為、幼少から虐められていたのだけれど……
《幼少から高校1年生までの記憶がない》
どうして、などわからないことを考える。
自分の心の中が、ぽっかり空いていて喪失感に襲われた。
そして勢いよく、布団の中にもぐりこみ、ぎゅっと目を瞑った。
「……ャ」
だ……れ?
「……クヤ」
え?聞こえないよ。
「サクヤ」
__っ!!
気がつくと、灰色の空間に居た。
(ここ……なんだか懐かしい)
来たことも見たこともないはずなのに、どうして。
どうしてそう思うのだろう。
自己心に浸っていると、男の声がきこえた。
「相変わらず君の心は読めないな」
後ろ振り返る。
口端をあげてにやける男は、ミステリアスな雰囲気を
気取っているにもかかわらず、貧弱そうだ。
一言であらわすと……《もやし》
色も形もそっくりだ。
『君は誰だ。相変わらず……という所、面識があるようだが』
「手をだしてごらん」
回答になってない、と言おうとしたが、
この状況では、自分が不利だ。
男の指示通り、右手だけを差し出した。
__チャリン。
『鍵?』
僕の手のひらに、鍵が落とされた。
「それは以前の君の私物だ。6月12日。約束は守るよ」
『何意味のわからない事を言っ……__』
視界がグニャリと歪む。
次に目が覚めたのは、自室の布団の上だった。
カーテンから覗く朝日を浴びながら、昨夜の夢を思い出していた。
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〜あとがき〜
記念すべき第1話!。
連載ラヴィノーツとつながっているお話です!
次回からもよろしくお願いしますね!
〜まゆら〜
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