「俺、なまえのこと好きなんだ」
じっとなまえの目を見て、恥じらいを抑えて言った言葉。でも帰ってくる言葉は決まっていて
「....えー、一郎太が?わたしを?冗談でしょ?」
けらけら笑いながらキミはそう言う。俺が本気で告白をしても、“幼馴染”という壁が邪魔をする。否定したいが俺にはそんな勇気はなくて、俺もつい
「....そうだよ、ばーか。ったくもっと面白い反応しろよな?」
と強がってしまう。本当は心が痛むほどなまえが好きで、幼馴染なんて壁をぶち壊したいのに。そしてまた今日が終わる。何も言えないまま、俺たちは幼馴染の関係のまま。
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珍しくなまえが真剣な顔つきで俺に話があると呼び出した。まさか、と無いとは思うが少し期待をしてしまう。ドキドキしながらなまえを待つ。しばらくしてなまえが来た。
「それで、話ってなんだ?」
「あ、あのね、わたしさ....
-------佐久間くんが好きなんだ...!」
時間が止まったような、そんな感覚が俺を襲った。頬を赤らめてもじもじしているなまえの態度からして本気だというのが分かった。声が震えないように俺はいつのも調子を装った。
「へえ、お前でも好きな人は出来るんだな」
「んなっ?!できるもん!! はああ一郎太なら昔からの幼馴染だし信頼できると思って相談したのに逆にバカにされたー!」
“幼馴染”だから、か... ぎゅっと握りしめた右手を悟られないよう後ろに隠し悔しさに心を痛めた。そしてまた、無理に笑う。
「ははは、ごめんなって。 で、告白はしないのか?」
「う、ん... 今日勇気を出して告白しようと思うの」
「そうか、実るといいな。頑張れ」
うん!と女の子らしい笑顔を見せそろそろ行かなくちゃだから、と去っていくなまえを見送った。途端我慢していた涙が流れ出した。
「....なまえを一番理解してるつもりだった、けど....まさか取られちゃうとはな...」
涙を止めるために空を見上げたが逆効果のようで止まることを知らずに溢れてくる。昔からの片思い、それが想いを伝える前に実らないなんてここまで悲しかったのかと痛感する。
もし俺となまえが幼馴染じゃなかったら、少し勝機はあったのか。
もし佐久間に別の好きな人がいてなまえが振られたら俺のこと意識してくれたのか。
どうやっても幼馴染の壁は分厚く弱い俺はただ現実を恨むしかなかった。
「...ずっとなまえの大切な幼馴染みでいること、少しは嬉しく思えるよう努力してみようか」
過去の長い片想いに蓋をして、涙を拭い俺は歩き出した。
幼馴染の運命(今更嫌いになんてなれないよ)
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お題元:
確かに恋だった。様
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