◇巡航船と駅について
巡航船はロストランド0128を、時計回りに一日かけて回り、翌日は同じルートを反対回りに戻ってくる。
ここでは巡航船が停まる十二の駅と、それぞれの周辺についてまとめておく。

1.グリーシャー・タウン駅
巡航船の出発/到着駅。町の中心にあり、天獄変の以前にこの一帯を治めていた領主、グリーシャー公の名を今も残している。
裕福な者が多く、煉瓦や石の立派な建物が並んでいる。郵便局と図書館(いずれも一部倒壊しているが)、町で唯一の銀行などがあるほか、百貨店や服飾店が立ち並ぶ、通称サガンストリートなども有名。
この地域では通貨での買い物が普通であるため、通貨を持たない場合は交換所へ寄って、持ち物を買い取ってもらうこと。

2.バートラム博物館駅
天獄変を免れた博物館の名前をとった駅。植物学者バートラムの研究成果とコレクションを集めた博物館で、入館には60ガット、もしくは相応のものが必要。周辺にはレストランや天文台、廃プラネタリウムがある他、グリーシャー・タウン駅から続く住宅街があり、比較的裕福な人々が集まる。

3.パークサイドホール駅
町で唯一の劇場の名をとった駅。駅からホールへは公園の横を通るため、十五分程度歩く。円形劇場だが数年前の天使の襲来で半分ほどが崩れ、今は半円形になった。
近隣はそれなりに賑わっており、貸し自転車屋、花屋、宿などがある。グリーシャー・タウン駅のものより手頃な百貨店もあり、ほとんどの店で物々交換での買い物が可能。

4.ダーカーズ・タウン駅
かつてグリーシャー公の治める領内でありながら、独立した勢力を持ってこの近郊を支配していたマフィア、ジョン・ダーカーの名が残る駅。カジノ跡、造船所跡、銀行跡など栄華の痕跡は見えるものの、天使による被害が大きく、ほとんどは半壊状態である。
崩れかかった建物や、新たに建てられた石、木などのアパートに様々な人々が住んでいる。十二の駅で最も人口が多い地区。ロスト・ランド0128の最も一般的な生活水準はここである。

5.ゴーストストリート駅
町の南端。ダーカーの支配圏で、カジノで負けたり店の経営に失敗したりした者が行きついたとされるスラム。天使の襲撃でかつての面影は失ったが、現在でも治安は最悪とされる。
巡航船に乗ってきた客=通貨を持っている、という理由で襲われやすいので、駅から降りる場合は注意が必要。
なぜそんな場所に駅が建っているかというと、近くに鉱山があるためである。

6.ラフタークロス駅
「ラフ」と「アクター」、二つの言葉が重なり合って生まれた地区の駅。この辺りにあるものは何かと言うと、レストランと宿屋の他は、すべてがバーと言っていい。
日々の不安や苦しみを抱える人々が寄り集まって、老いも若きも演者のように馬鹿笑いをしながら飲んだくれるというので、この名前がついた。
物々交換でも飲むことはできるが、通貨でしか提供されない酒もある。

7.聖ヴァニア礼拝堂駅
聖女ヴァニアを祀った礼拝堂に続く、長い一本道の手前にある駅。天獄変の遥か前に建てられた教会で、ほとんどの場所が奇跡的に無傷のまま残されている。
聖ヴァニアは天獄変より以前に信仰されていた聖女だが、その役割が「神に人々の罪を代弁し、赦しを願う者」であったため、天獄変の後も彼女に対してだけは信仰が残った。現在はいつか、神と人とを繋ぐ存在として扱われている。

8.グリーシャー・アカデミー駅
グリーシャー公が出資した学園地区に建つ駅。かつては目を瞠る壮麗な学院が、初等部から大学院まで建ち並んでいたようだが、その大きさゆえに今となっては崩れた後の処理ができず、巨大な石と砂塵の廃墟となっている。
中央に広場があり、枯れた噴水、打ち捨てられたグリーシャー公の銅像などがある。周辺にはかつての学生寮が多く、他の施設はあまりないが、エメラルド・ストリート駅までは歩いて三十分かからない。

9.エメラルド・ストリート駅
かつて学生たちの遊び場だった通りの名前がつけられた駅。今でも若者が多く、食べ物屋や本屋など、小さな店が点々と並んでいる。
エメラルド・ストリートという名前の語源は、かつてグリーシャー公の出資した学校に通う生徒たちが、帽子に留めていた校章バッジが鮮やかなグリーンだったことからつけられた。よほど生徒がたくさんいたのか、今でもこの校章バッジは骨董屋などで手に入る。

10.ムーンレイク駅
町の北西部にぽっかりと開いた、満月のように丸い湖の傍にある駅。綺麗な場所だがあまり降りる人がいないので、駅自体は小さく、近隣に宿もない。野宿を覚悟して降りる場所である。
水が澄んでいて、雨上がり以外なら飲むことができる。グリーシャー・アカデミーの周辺へは、この湖から水路が通っている。

11.シンキング・フォレスト駅
町の北部を覆いつくす、広大な森の入り口の駅。風がほとんどなく、鬱蒼とした様子が熟考を思わせることから、この名がつけられた。
森の中は少し進むと、エルフの集落が点在している。森を抜けるには徒歩だと丸一日以上かかるので、彼らに礼を渡して、案内を頼むのが賢明だ。

12.エンド・オブ・ロスト駅
巡航船の到着/出発駅。シンキング・フォレストを抜けた先にあり、荒涼とした岬が北へ向かって突き出している。ここが町の北端であり、ロスト・ランド0128の果てである。
晴れた日には、彼方の海が凍っているのが見えることがある。この地が他の大陸と比べても、北寄りに位置していることが分かる。
人々の中には、エンド・オブ・ロストの先には美しい世界が広がっているなどという噂もあり、新天地への望みを抱えてやってくる人は後を絶たない。

 
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